No.
88
烏の緑羽

「分かるけど分からねェ……!」が解消されるかと思ったら、フォーカスされた先が長束さまだったので色んな事が分からないままっていう~~~~!【楽園の烏】の感想でも言及したのですが、今回も読書エンジンがかかるのが遅くて前半は休み休み読んでいました。しかし中盤になってからは何もかもが気になってきて、就寝時間を1時間半もオーバーした形で一気に読了してしまい。八咫烏シリーズ、最初のパンチが本当に弱いんだけど、前半の出来事が遅効性の毒みたいに一気に巡り始めるから凄いなあと思います。いやだってこのタイミングで路近の話聞きたい人とかいる!?!?おらんやろ!!けれど、長束さまと路近周辺を掘り下げる事によって、山内の裏の部分とかの世界観がこれでもかと感じる事が出来たので、必要な内容だったなぁと考え直しました。というか、雪哉一人に肩入れせずに済む。

【烏の緑羽】は長束さまのオムツがいかにしてとれたか、というのをメインテーマにしているようで全然そうじゃなくて、山内のいびつさを改めて叩きつけたかった+サブの登場人物について掘り下げる事で、雪哉と対立している面々への共感力を上げたかったのかなって。そもそもとしてタイトルが……だし!【追憶の烏】で雪哉の心境だけ知っている状態で、いかにして【楽園の烏】に至ったかが描かれたら、大多数の読者が雪哉の選択が正しいと思ってしまっていたと思います。前作主人公だしね。長束さまと緑寛が掘り下げられた事によって、ああいう環境で育ってきて、その上での信条があるから雪哉と対立したんだな、という納得力が上がったというか。ネット上の争いごとでもそうですが、片方の事情だけしか知らないとかフェアではありませんからね……。両者の下地をしっかりと読み込めた事で、これから先に何が起きたとしても片方に過剰に肩入れせずに済むのは助かります。とくにわたし、めちゃくちゃ感情で物を言うので!分からないものは怖いの精神なので!


「お前――このためか」
 その顔を見た瞬間、これまでどうしても分からなかったことが、ようやく分かった。
「このために、私に仕えてきたのだな」

 ―第六章 翠寛


ここからの流れ、パズルのピースがカチッとはまって脳汁がぶわーーーっっと出る感じが堪らなくて大好きです。しびれた。
緑羽視点で路近の過去を追ったものの、追えば追うほど意味が分からない存在で霧は濃くなっていくばかりで。早い話がサイコパスですよね彼……。精神疾患をバシッと決め打ちしていうの、物語上の登場人物とはいえちょっと憚られるな~~!路近自身が望んでそうなったのではなくて、生まれ持った気質だからなおのこと。
それはさておき。理由が理解出来たからといって、それを心で咀嚼出来るかどうかは別だな、と路近を見て感じました。先のように”納得力”という言葉を私はよく使いますが、彼の事は分かったけれどその心の在り方に納得は出来ないというか。霧は晴れども、そこには沼が広がっていてこれ以上は追えなかった。そんな感じです。これを側における長束さまは凄い人だよ……すごいよ……。奈月彦を全肯定するだけの人だと思っていたら、今巻で一気に深みが増したなあ。なんせ私、

雪哉の主どこ行った!?!?奈月彦だけじゃなくて浜木綿もいないし私の大好きなますほさんもいないし更には澄尾すらいないんだが……?いないんだが…?どういう事なの…なんなの…全く分かんない…作者さんがこの混乱を狙っている事だけは分かるんだけど。ますほさんとか澄尾いるとなんかちょっと安心するから長束の方出すのがまたいい塩梅だわ…。その長束様もよう分かんないとこにいるしさあ。

って【楽園の烏】の感想で言うてるから!!長束さま出てきても全然安心感ないって半ばディスってるから!!ごめんね!!しかし公式でバブちゃん判定が出た事により、この時感じた私の長束さま評は間違ってなかったんだな、って。

次巻はようやく浜木綿さん視点が来るのでしょうか。正義の反対は悪ではなく別の正義、というのを痛い程描いている第二部。登場人物の行く末というミクロ視点も気になりますが、八咫烏の未来というマクロ視点でも続きが気になっています。栄えなくてもいい、穏やかな未来がありますように。

20230510143754-motiri.jpg追憶の烏 /八咫烏シリーズ
(阿部智里)

#阿部智里 #八咫烏シリーズ

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