No.
87
追憶の烏

前作までの間に何があったのか分かるけど分からねェ……!そんな感じです。加えて衝撃のラストに全部気持ちを持っていかれたので、間の出来事への印象が割とすっぱ抜けている。あのラストに驚かない人はいないでしょう……露ほども思い浮かばない再登場だったよ……!

若宮の心変わりというか、件の遺言に雪哉の思いと同じく一瞬だけ「なんで!?」と思ったのだけど、すぐ腑に落ちた、のち感傷的な気持ちになった。家族を得た事で、『金烏』から『ただの奈月彦』になったんだなあと。……いやもしかしたら山内を考えての事かもしれないけれど!今のところ私はこう考えています。だから、金烏に仕えていた雪哉が浜木綿さんと袂を分かつのは至極真っ当な事で。ただ、理解は出来るが感情が追い付かない……!分かるけど分からねェ!紫苑の宮は何を思っているんだい!憎悪の英才教育を受けたのか!?

改革には痛みを伴うもの。現実の歴史でも存分に語られていますが、その痛みは先の合戦で既に終わっていると思っていました。猿や神といった”外敵”と一致団結して戦う事によって、分裂の危機を乗り越えたと勝手に感じていた。しかしまーーーーーそんなはずはないのよねえ!!敵がいなくなったら新しく敵を作るだけ……というサイクル、日常生活でも心当たりがありすぎてしまう。奈月彦、いかんせん有能な身内に甘くて一度でも敵/無能と認定した者にめちゃんこキツイな、と思っていましたが、きっと同じ事を色んな所で色んな人が思っていたんでしょうね。だって私【烏に単は似合わない】の奈月彦めちゃくちゃ嫌いだもん。なんやねんコイツ!って感じでした。彼の少し深い所に入らないと、彼の気持ちは全然全くサッパリ分からない。そして分からない存在は、こわい。大人たちと女の憎悪が上手い事噛み合って奈月彦の暗殺が成功してしまったわけですが、その背景には割と納得の気持ちでいます。繰り返すけど最初奈月彦嫌いやってん!!その感情を思い出すだけで、四家の方々の気持ちと彼女の気持ちがちょっと分かるのよ……。しかし納得はしているけれど、だからといって死んでもいい訳ではない。奈月彦に限らず誰でもそう。そこの辺り、胸がモヤモヤします。これも『追憶の烏』における「分かるけど分からねェ……!」の要素だなあ……。

【楽園の烏】に至る雪哉の行動は全部納得しかなかったのだけど、奈月彦の気持ちだけは推察するしか出来なくて本当の所が凄く気になる。語られる日が来るのだろうか。語られたら、私の心は誰に傾くのだろうか。
それにしても雪哉、ずーーーーーーっと行動がブレない。家族が大事だから山内が大事。その山内を大事に想っている金烏である奈月彦が大事。いや、奈月彦個人の事もきっと大切に思っていたと思う。ただそれ以上に、金烏としての彼に焦がれていただけで。心の中に柱がキチッとあるキャラは、一見意外とも思える行動をしてもちゃんと理由が分かるから良いですね。

っていうかあせび~~~~~~!!

あせび!!お前!!!退場したはずでは!!すごいなあこの女!!!自分が成り上がるために何もかもを道具にする系の女!!すごい!!
あせびの凄い所は、機が熟すまでの種まきをせっせとして怠らない所です。【烏に単は似合わない】でも仕込みを存分に行っている事は描写されていました。その下地がある故に、最高のタイミングで最悪の花を咲かせられるように潜伏していたんだな……と急な再登場に納得するしかない。すごい女だよ……お前人狼ゲーム得意だろ……感情で吊り逃れ出来るタイプの狼だよ……いっそ見習いたいぜ……。
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20230510143446-motiri.jpg 追憶の烏 /八咫烏シリーズ
(阿部智里)

#阿部智里 #八咫烏シリーズ

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