No.
209
コンビニ人間

まず私の結論から発表しようか!
これはハッピーエンドです、ハッピーエンドだと思います私は!
……このねえ、どうしようもなく考え込んでしまうラストがたまらなく良いですよ……。スタンディングオベーション、涙を流しながら迎える完全無欠のハッピーエンドがいちばん大好きなのはそうなんだけど、今回のように人によっては全く感じ方が違う終わり方をする作品ってのも良いものですね。

家族の本棚にあったので拝借してきた本作。〝コンビニ人間〟とはなんのこっちゃら?と思っていたらマジで「コンビニ人間だぁ……」ってなるから握力がつよぉい……。冒頭の数十ページでここまで力強い興味にそそられた作品って今までそんなにないかも。少なくともここ最近読んだ作品の中では随一でした。
普通になれない主人公がコンビニ店員というカタチを摸倣する事によって世界とのつながりを得ている。一言で説明するとこうなんだけど、これが本当にガチで、マジで、本気のソレで、どうあがいても〝普通にはなれない〟というエピソードがページをめくるたびに積み上げられていく事によって読んでいるこちら側にも毒ダメージを与えてくるんだよなあ……。それと同時に「普通とはなんぞや?」という問いをずっとこちら側に訴えかけてくるんだ。

一歩間違ったら人ってこうなる……という言葉を書いてしまって思ったんですが、主人公の擬態の中にあるモノを私は「間違っている」と思っているからこそ、こう言っちゃってるんですよね。やばいな、自分の価値観曝け出し大発表会になってしまう、ごめんなさい引かないで下さい。
嫌だなー……私これに対して間違ってるって思ってるのか……ヤだな……でもさあ、こうはなりたくないんだよ。だって絶対生きづらいじゃん。小鳥が死んだら「食べればいいじゃん」って思って、誰かが喧嘩しだしたら「殴って黙らせればいいじゃん」って方程式が秒で出てくるの、ヤじゃん。

でも世界にはこう思ってる人がいてさ。それに対してどうすればいいのか、どう思えばいいのかっていうのをすごく考えてしまった。妹みたいに「治してもらおうよ」っていうのが私の立ち位置だと思う。皆が皆ありのままに生きていけたらそれがいちばんいいけれど、多に属せない個があるっていう事が社会って難しいなあと思います。


しかして一方で、主人公から見えている世界が静かで真っ白ですごく好きだ。

外から人が入ってくるチャイム音が、教会の鐘の音に聞こえる。ドアをあければ、光の箱が私を待っている。いつも回転し続ける、ゆるぎない正常な世界。私は、この光に満ちた箱の中の世界を信じている。

〝教会〟〝光〟っていうキーワードでコンビニというものに救いを求めているのがありありと現れていてとても良い。コンビニに対してそんなこと思ったことないよ、深夜のコンビニの煌々とした明りは好きだけど。みんなが寝静まった深夜、あそこだけ世界が動いていて他の何かと繋がれている感覚がして好きでした、病んでた時。……人それぞれの信仰がコンビニにはある……のか……?

あとここ、明らかに「風向き変わって来たな……」って台詞でゾクッとした。

「身体の中にコンビニの『声』が流れてきて、止まらないんです。私はこの声を聴くために生まれて来たんです」

ダメとダメが合わさって、なんとかアレコレ乗り越えて普通になる、そんな事を途中まで想像してたのよ。いやいやでもそれは難しいのではないか?と訝しんできたら、斜め上を行く未来をお出しされて空いた口が塞がりませんでした。
でもこれは私にとってハッピーエンドだから。前向きだから!
頭から尻尾まで問答無用で面白い作品でした。コンビニ人間の誕生に祝福を、未来に幸あれ。


20260202210505-motiri.jpgコンビニ人間
(村田 沙耶香)

#村田沙耶香 #文春文庫

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