No.
195
一次元の挿し技

第23回『このミステリーがすごい!』大賞の文庫グランプリ受賞作品。このミス、とくに気にしている賞ではないんだけども、表紙とアオリに惹かれてしまって。

二百年前の人骨のDNAが四年前に失踪した妹のものと一致!?

これはインパクト強いでしょう!
立ち読み確認した時の読み始めの掴みもバッチシ。これで「広げた風呂敷をきちんと畳み」というお墨付きがあるんだから安心して飛び込めます。書評家の皆さんの言葉って力強いな……。

そして物語を見守った結果なんですが、無言のスタンディングオベーションをする温度感ではなくとも、ちゃんと綺麗に終わって面白かったです。途中の不穏な感じからこのカタチに落ちるとは思ってなかったなー!

初動、いかんせん人の死に「ウッ」ってなるので、バタバタと死んでいく様子に辛くなりながらページをめくっていました。人死が起きてテンション上がるのはデスゲームの時だけだよ。
それと失踪した妹こと紫陽の描写に初めは惹かれていなくて。一言で表現すると現実感のない魔性の女なんですよね彼女。都合のいい偶像のような女性。……まあ、これは、……うん!読み終わった立場からは「お見事!」としか言いようがないのだけども!
納得の理由に加え、途中の描写で人間味が出てくるので最終的には好きでした。なんてったって広義の愛だし。私の大好物だし。

遺伝子の話はあんまり深く考るとドツボにハマるので苦しくなっちゃうんですが、たったの4文字の配列が人間の運命を決めるっていう表現にハッとしました。1文字でも違ったら自分にはなってなくて、なんか途方もないすごい話だなって。
だから牛尾の気質の話を聞いて紙一重だって思ったらすごく悲しくなった。そう成りたくて生まれたわけじゃないのに。

牛尾から発せられる『ちゃぽん』って描写が最初はホラー的な要素で恐ろしかったんだけど、いざ中身が分かるとただただ普通に現実感のある恐怖で頭が支配されるからすごいね!?やべーよ!持ち歩くなよそれを!!こわ!!

ところどころで都合の良さ全開な場面があってそこに引っ掛かりを覚えました。でもこの長さの短編でサクサク陰謀論やろうと思ったらこれくらい強引なストーリー回しは必要だよなとは思う。
……そう分かってはいるんだけど、中でもとくに主人公の顔の良さで問題を通過していくとこは正直、ちょっと……!悠くんの顔の良さ自体はいいんだけど、それによって女の性欲を直で見せられるのがシンドイ〜!メインフレーバーがそれなら掘り下げて味わい深くしてくれたらいいんだけど、都合のいい理由付けだからさあ!そこが嫌だったかなって。
それに最後の最後の部分は読者全員が「それは無理やろ」ってなるとは思う。人間の身体の機能の話です。

時系列がやたらめったら飛ぶのに読みやすかったのが不思議でした。なんだろ、悠くんの時だけ一人称視点で、他の人の場合は三人称一元視点になるからカメラ深度の問題で流しやすかったんだろうか。帯に「文章力が圧倒的」「文章も上手い」って評があるけどこれは本当にそう。ただ、ミステリー読みにはその読み口の軽さがラノベ的に映るって意見も見たから人を選ぶ感じになりそうだなとも。私は読みやすかったです。

割とあーだこーだと文句を言いましたが、積極的に時間を作って3日で読み終えたので面白かった事は間違い無いです。つまらなかったら間が開くから!なにより結びが好きなんだよなあ……。
自分と隣人を愛す話だよ、これは。


20250811122500-motiri.jpg一次元の挿し技
(松下 龍之介)

#松下龍之介 #このミス

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