No.
183
小説

2025年本屋大賞3位受賞作品。小説といえばここ十年近く作家買いしかしていない程度にはアンテナが鈍っていたのですが、インターネットをザッピングしていた際に「2025年始まったばっかりだけどこの本がいちばん良かった、最高」といった旨を見かけ興味を持ちました。
これがねえ、不思議なことに全く初対面の他人の言なのに引っかかったのよね。好きな読書家さんが言ってたとかじゃない、なんとなしに辿り着いたブロガーさんのひとこと。誰だったかも既に思い出せない。
とはいえ「なんか気になる」程度でホイッと2,145円を出せるほど私は豊かではなく、ひとまずAmazonのレビューを確認する事にしました。

小説とか、お絵描きとか、ハンドメイドとか、あとはプロを目指す程でも無い趣味のスポーツとか、
お金にならない、高い社会的地位を得ることに繋がらないけどすきなものに、時間やお金を溶かしても誰も口出しする権利なんかないはずなのにそう行ってくれる人って親含めても周りにいないですよね。そんな人に寄り添ってくれる、お金にならない趣味を続けてもいいのか?にたいするアンサー本です。すきだからってYouTubeやインスタにアップしてお金稼ごうとか思わなくていいんだよな。


速攻で買ったよね。
いやすごいなこのレビュー!シンプルに心のど真ん中を突き、『アンサー』が知りたくなる。素晴らしい、ありがとう。あなた方のおかげで私はこの本に出会えた。宇宙を感じられた。

本の内容を一言でいえば『小説賛歌』なんだけど、その伝え方と噛み砕き方が良かったです。だってさあ、それを答えるのがあの人なんだもの。そりゃこうやって話すよね、って……。全部読み終わった時に「……だからか!」がたくさんあって気持ち良くなったと共に涙腺が緩みました。

鼻水啜りポイント、いっぱいあるんだけど特に決壊したのはここです。


「外崎には文才がある」


この一文だけでどうしようもなく辛くなってしまってベソベソに泣いてしまった、近年まれに見る降水量でした。小学生からの親友ふたりが遠からず断絶される事は分かっていたんだけど、その通告がハッキリとなされて瞬間の内海の心情を慮ってしまって感情が溢れた。いやーもうこれは物作りをしている全ての人間に刺さるよ……泣くでしょこれは……。悔しいとか寂しいとか憧れとかぜーんぶないまぜ。無理。

──って思って、読んだ瞬間にこの気持ちだけメモに記してたんですけどね、いやもうこれは、なんかもう、嘘じゃん?内海すごくない?支えてんじゃん外崎を。お前が繰り出す不穏モノローグは一体なんなんだよ、ずっと献身的に支えてるよ!!出来た人間だよお前は!!!
読んでしばらくの間は「騙された!」って思いながら外崎が真っ赤な絨毯を歩くまでの苦労話を半ば白けた気持ちで見ていましたが(だって絶対受賞するやん)、その後まさかああなるとは思わず………。そこから手を休める事なく一気に読んでしまいました。

宇宙の始まりとか所有物の話とか刑事さんの話とかどう繋がるんだろうなって訝しんでいたのだけど、こうも綺麗に繋がるとはなあ……。急なジャンル方向転換に若干面食らったところもあるんだけど、丘(と聖地)の話は最初からされていたしすぐに受け取る事が出来ました。
なによりね、美しいと思うの。光と音を飛び越えるのに理屈なんていらないのよ。必要なのは心で、それが完璧なまでに、あった。それだけのこと。それにこれは『小説』だから。


「読むだけじゃ駄目なのか」

この解を出すために生きてきた時間、ずっと楽しかっただろうなと思う。人生を賭けたラブレターを渡すためだけの生。内海より先に外崎が収束しただけの話でもあるんだろうなあ、このエントロピーの果てできっとまた会えるって思っちゃうもの。いや、外の『嘘』を内に入れるからもうずっと一緒なのか、そうか。
途中から思ってたけど、最後まで読むと内海と外崎って名前にもしみじみしてしまうな……。全部が対比になっている。


「小説は心を合わせるもので……心は時間で変わるから……つまり、時機があるんだ」

読み終わってからはヒゲ先生のこの言葉の意味がまるっと変わるというか、十全理解出来るのがニクイよほんと。頭の中にパーッと快楽物質が分泌されるような感じ。慰めじゃなかった。ただの真実だった。それになによりさあ、いつも言ってた事が更に色づくのが良いよね……。

「読んだ?」

あかへん、読み返してたらいちいち泣く気がする。ただの4文字、ただの4文字なのに大事なものが全部詰まってるんよ。この一言が、ただただ愛おしい。

最後一行に全てを込めて。このアオリに偽りなし、最高の宇宙でした。


20250604123148-motiri.jpg小説
(野崎 まど)

#野崎まど

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