【ゲーム】ファミレスを享受せよ【感想】

 

設定開示の塩梅が天才の塩加減だよー!!

 

最後までプレイし、そのままイラストギャラリーに雪崩れ込んでまず感じたのがコレです。感動した。「あの場所は何か」「あの人は何だ」に対して本編中でほんのりとしたアンサーをしつつも、明確に開示される事はなかった。だってそれを知らなくても目的は達せられるし、ムーンパレスからの脱出が可能だから。【ファミレスを享受せよ】というゲームで『遊ぶ』にあたっては関係がない事。しっかりと背景の設定がありながらも、ゲーム中で出す情報を取捨選択しその中で世界を終わらせた上で、今後も広げようと思えば広げられる力がある設定力に強く心が揺さぶられました。あの直立に刺さったおさかなさん達は月の三賢者だったんですね……。月の民に関する補足が手厚くて助かる。

本編の本筋に関しては「よくある話」ではあるので、特に言う事が思いつかなかったりします。悪い印象がゼロだったという事でもある。愛という感情は人を……いや、『永遠』すらも曇らせるんだな、と。王様って善性の塊だもんな、惹かれるのも分かるよ。

このゲームで一番たぎったのが、先ほども話題に挙げた『16桁総当たり解除』です。会話ストックも尽き「マジで総当たりするしかないのか…」と絶望に似た気持ちでピコピコとコントローラーを操作し始めたあの時。今までとは打って変わった曲調のBGMと共に記号がぐるぐる回り出した瞬間。あの時の高揚感が本当に凄まじかった!あ、これはゲームじゃないと体験できないやつだ、って!ラーゼさんマジぱネェっす……。

 

 

長らく感情という感情が動いていなかったんだろうな、というドモリに笑ってしまった。

そして『わたし』と『ラーゼ』の境界線が最初はぼかされているのがまたいいですね。『あなたの席』であって『ラーゼの席』ではないのだ。最初からラーゼの存在をハッキリ強く形作られていたら、私はたぶんこのゲームに対してここまでの想いを抱いていなかったと思う。
………っていうかサントラの『総当たり(ピアノVer)』めっちゃくちゃにサイコーだが~!?!?!アレンジの仕方が上手!!うわ~~~~好きだ~~~買って良かった~~~!!!

各人のエピローグが丁度いい温度感で好きです。あの二人が一緒に居るところ、ハッキリとは示していないけれど、イラストと皆の言葉からそれが分かるのが好きだな。『幸せに暮らしました』っていう結びが入るんじゃなくて、その人が笑顔であった事を他の人の視点から示されている終わり方というか。
それとラーゼとガラスパンのやり取りで〆が入るのも大好きでね……。「おいしっ」って言った時に「よかったね」って返してくれる友達ってサイコーじゃんか。何故だかじんわり涙が出ちゃったよ。

あ!画面の色使いに関して全然触れてなかった!!これには触れないとダメでしょう!!
どこかふたしかなフリーハンドの黒線に、月光と夜の2色しか使わない画面構成がセンスありまくりで惚れ惚れします。視覚から世界観を伝える力が強い!……また言っていい?乱用していい?「天才!!!!」って言っていい?本当に凄いと思う。
普段は黄・青の2色がメイン配色になっているがゆえに、画面に黒の比率が増えた時に不安感と胸騒ぎを覚えました。コーヒーが漏れ出しちゃったところね!何かが浸食して「取り返しがつかない事」が発生している気分になって凄かったです。ありゃ怖いよ。ガラスパンはそれでも連打し続けて溺死しようとしたんだから恐れ入る。

ガラスパンで思い出した。彼女は「数万年ココにいる」って言ってるけど、ムーンパレスって30歳なんですよね。体感数万年であって、実際は30年って事で合っているだろうか。そも総当たりの最中に数百年経過してるはずがないもんね。………いや、16桁の総当たりやった事ないから分かんないけど………私は永遠じゃないから……。欲しいな……永遠……。友達によく「太陽系が終わるまで一緒に居て」って言ってるから私……。………いいな…クラインと王さま……。

心の深い部分にある欲を暴かれてしまったじゃないか……恐ろしいゲームだ……。深夜のファミレスで「エビは入ってませんか?」って聞くしかないな。とても良いゲームでした。