2025年8月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

No.
195
一次元の挿し技

第23回『このミステリーがすごい!』大賞の文庫グランプリ受賞作品。このミス、とくに気にしている賞ではないんだけども、表紙とアオリに惹かれてしまって。

二百年前の人骨のDNAが四年前に失踪した妹のものと一致!?

これはインパクト強いでしょう!
立ち読み確認した時の読み始めの掴みもバッチシ。これで「広げた風呂敷をきちんと畳み」というお墨付きがあるんだから安心して飛び込めます。書評家の皆さんの言葉って力強いな……。

そして物語を見守った結果なんですが、無言のスタンディングオベーションをする温度感ではなくとも、ちゃんと綺麗に終わって面白かったです。途中の不穏な感じからこのカタチに落ちるとは思ってなかったなー!

初動、いかんせん人の死に「ウッ」ってなるので、バタバタと死んでいく様子に辛くなりながらページをめくっていました。人死が起きてテンション上がるのはデスゲームの時だけだよ。
それと失踪した妹こと紫陽の描写に初めは惹かれていなくて。一言で表現すると現実感のない魔性の女なんですよね彼女。都合のいい偶像のような女性。……まあ、これは、……うん!読み終わった立場からは「お見事!」としか言いようがないのだけども!
納得の理由に加え、途中の描写で人間味が出てくるので最終的には好きでした。なんてったって広義の愛だし。私の大好物だし。

遺伝子の話はあんまり深く考るとドツボにハマるので苦しくなっちゃうんですが、たったの4文字の配列が人間の運命を決めるっていう表現にハッとしました。1文字でも違ったら自分にはなってなくて、なんか途方もないすごい話だなって。
だから牛尾の気質の話を聞いて紙一重だって思ったらすごく悲しくなった。そう成りたくて生まれたわけじゃないのに。

牛尾から発せられる『ちゃぽん』って描写が最初はホラー的な要素で恐ろしかったんだけど、いざ中身が分かるとただただ普通に現実感のある恐怖で頭が支配されるからすごいね!?やべーよ!持ち歩くなよそれを!!こわ!!

ところどころで都合の良さ全開な場面があってそこに引っ掛かりを覚えました。でもこの長さの短編でサクサク陰謀論やろうと思ったらこれくらい強引なストーリー回しは必要だよなとは思う。
……そう分かってはいるんだけど、中でもとくに主人公の顔の良さで問題を通過していくとこは正直、ちょっと……!悠くんの顔の良さ自体はいいんだけど、それによって女の性欲を直で見せられるのがシンドイ〜!メインフレーバーがそれなら掘り下げて味わい深くしてくれたらいいんだけど、都合のいい理由付けだからさあ!そこが嫌だったかなって。
それに最後の最後の部分は読者全員が「それは無理やろ」ってなるとは思う。人間の身体の機能の話です。

時系列がやたらめったら飛ぶのに読みやすかったのが不思議でした。なんだろ、悠くんの時だけ一人称視点で、他の人の場合は三人称一元視点になるからカメラ深度の問題で流しやすかったんだろうか。帯に「文章力が圧倒的」「文章も上手い」って評があるけどこれは本当にそう。ただ、ミステリー読みにはその読み口の軽さがラノベ的に映るって意見も見たから人を選ぶ感じになりそうだなとも。私は読みやすかったです。

割とあーだこーだと文句を言いましたが、積極的に時間を作って3日で読み終えたので面白かった事は間違い無いです。つまらなかったら間が開くから!なにより結びが好きなんだよなあ……。
自分と隣人を愛す話だよ、これは。


20250811122500-motiri.jpg一次元の挿し技
(松下 龍之介)

#松下龍之介 #このミス

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No.
194
追憶の烏(再読)

すごい。八咫烏シリーズにおける私、忘れっぽさ並びに自分にとって都合のいい事しか脳に残さないのを盛大に発揮してる。すごい、いっそ関心する。本の感想を書き残すようにしていて良かった……おもしろいぞ過去の自分の感想。
そんな感じで少々辟易しつつ再読の感想です。いちばん最初の感想はこっち


お前さん、【追憶の烏】で澄生が紫苑の宮だって認識してたのに【望月の烏】ですっぱり忘れてるのなんなの~!?
ワロタ……ワロタ……間に違う話が挟まって2年経つと忘れる……トリ頭……。

いやもうピュアで可愛いですね自分。お恥ずかしい。そもそもとしてあせびの再登場に全部持ってかれているのがありありと分かる。
それと雪哉と奈月彦の話しかしていないのがちょっと意外だった。今回の再読でいちばん私の心を揺さぶったのって滝本さんパートだったので。

──藤波にとって、美しく、優しい、唯一の『男』が奈月彦なのだ。
 それに思い至った瞬間、滝本は、全身から血の気が引く思いがした。
 (中略)
 遠ざかる藤波を見つめていた大紫の御前は、その後ろ姿がすっかり見えなくなった頃、小さな声で呟いた。
「あの子を頼む」
 出来るだけ優しくしてやっておくれ、と。


ここで滝本さんの気持ちと完全シンクロしちゃいました。お前も八咫烏(にんげん)だったのか、と。
これ、読んでいた当時は【烏百花 白百合の章】の小話を知らなかったので大紫の御前の心境なんてとんと分からなかったのですが。弟の融に懸想している事は設定上のこととして知っていたけど、実感が伴わないままだったから特に何も思わなかった。でも、彼女の心の深いところに触れたあとでは読み心地が少し違ってきて。仲間を見つけて本当に嬉しかったんだろうなあ。
そして裏切られたと知った時の絶望たるや。
すごく悲しいひとだ。ただ純粋に、恋する女の子でありたかったよなあ。


私ねー、滝本さんが藤波に向けている感情がほんとうに好きで!憎らしくてしょうがない部分も全部ひっくるめて、己の子のように愛していたんだよね。

だが、降りしきる雨の中、身分に見合わぬ粗末な衣を着たまま倒れているその姿が、あまりに可哀そうで、愛しくて、どうしてもそのままにはしておけなかった。

ここからの流れ全部大好き。動作と感情にありったけの愛がこもってる。私は愛の話が好きです。


言及している人物といえば、浜木綿さんに対して何もしゃべっていないな?友達には語ってたんだけど。
実は前シリーズではそこまで注目していなかったんですよね彼女に。嫌いというわけではなくて、真緒の薄が女性陣の中で飛びぬけて好きだったので目端にしか映していなかった。
そんな浜木綿さんのことなんですが、【追憶の烏】を読んでハチャメチャに好きになりました。「あの醜態を見て!?」って思われるかもしれないんだけど、あそこに奈月彦への深い愛情を見いだしちゃったんですよね私は……。
愚かだよ、愚かではあるんだけどさ、剥き出しの感情にホンモノを見たというかな……。かつては何もかも諦めて澄ました顔でいた浜木綿さんが、夫の死であんなにも崩れるんだ、っていう事に八咫烏(にんげん)みを感じてしまった。
なので私は紫苑の宮が好きっていうよりは、浜木綿さんのとった愚かな行動を否定したくがないがゆえに彼女の肩を持っているところがあります。

いやしかし【きんかんをにる】で言及されていたことだけど、紫苑の宮は政治の才覚が幼少期からあるなホント!?東家の花祭りでのムーブが凄まじい、民衆の好感度を上げに上げていっておる……。9歳でこれとは末恐ろしい……実際おそろしくなった。
あと毎回言ってるけど「>全て皇后の思う通りに」の一言がマジで分からん。ずーっと分からん。初見では「腑に落ちた」って言ってるけど今の自分には分かりません。……いやどうかな……分かってるのかな自分……。雪哉と同じように、彼が私情を選択したと思いたくないだけかもしれない。奈月彦~~~バカ~~~~!!!

はー……雪哉と紫苑の宮、どちらの肩を持つか決めるために始めた再読なんだけども、答えが……答えが……出ない……。雪哉目線の話を読んだがゆえに雪哉に寄っているのはある。当たり前体操。これアレだなあ、第三者目線の【楽園の烏】に帰らないと駄目か?正直なところ前半パートが眠いんだよな……。頑張って帰るか……楽園に……。

保留!どっちの味方をするか保留!!私の気質はまだ東家!!
畳む



20230510143446-motiri.jpg 追憶の烏 /八咫烏シリーズ
(阿部智里)

#阿部智里 #八咫烏シリーズ

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No.
193
夏季限定トロピカルパフェ事件

再読祭り第二弾です。
なあ、小鳩くん謎を解くことをやめる気が全くないな?性格がすごい捻くれてて笑う。シャルロットを食べたいのは本心の一部なんだけど、小佐内さんへの挑戦が大元の理由だったとは……忘れてたぜ……。
こう、なんかもっと可愛い内容だと思ってたんだ、『シャルロットは僕だけのもの』。そもそもとしてタイトルが良いよね。サブタイを十何年も覚えている程度には気に入っている。

このお話はそこはかとなく性の香りがするというか、それを彷彿とさせるキーワードが散りばめられているのがドキドキを加速させていて好きです。
──夏、衝動、欲望、滴る汗、火照った身体で冷えた麦茶を飲み干す。
青春、しちゃってる感あるじゃないですか。性欲のメタファーとして食事表現が使われることもあるし、男女ふたりが密室でスイーツをつつき合うってなかなか高度なシチュエーションだと思うなあ。や、すぐカップリングしたいお見合いおばさんの性質を出しているわけじゃなくて、雰囲気作りとしての舞台設定の話ね。色気を醸し出しつつも謎解きに主題を持っていくのがすごい。当時読んだ時はこういった演出に気付かず読んでいたと思うのだけど、無意識のうちに感じ取っていたからこそ深く印象に残っているタイトルだったんだな、と。

「困ったな。⋯⋯欲しいよ」

小鳩くんのこの一言、ずるい。「(もうひとつケーキが)欲しいよ」なんだけどさ!これは性を誤認させるための演出が多々あるって言っていいと思うの!


なんかシャルロットだけでそれなりに書いちゃったからあとはラクに喋ろう。
小佐内さんが夏休みの間に仕込んだもろもろの出来事、あまりにも用意周到ですごいなと感心しきりです。男を掌で転がす才能がありすぎる。そう、私が見ていた小佐内ゆきはこういう子だった……。
それにしたってやってもいない誘拐事件の捏造は……チョット……引く……。いやこれは小鳩くんが苦い顔をするのも分かる!だって私ですら引いた!自己防衛と言えど過剰防衛では!?まあ仕方ないんだけどさあ。昔の私、この段階で小佐内さんのこと嫌いにならなかったのすごいな。大人の私は結構ビックリしちゃったぞ。

小鳩くんは健吾にだけ弱みをいっぱい見せていくのが良いですね。正直に言います、このふたりの関係性めちゃ萌えです。いざという時に頼れるだけで、普段はまったくもってつるんでないのがいい。つかず離れず。

やっぱりさあ、夏は解放の季節だって思うな。だって小鳩くんも小佐内さんも皮を被るのをまるっきりやめていたんだもの。表題の大勝利。
そして秋は実りの季節、お次は栗きんとんです。小鳩くんと小佐内さんに恋人が出来たくらいしか覚えていないから楽しく読めることでしょう。いや~再読祭り楽しいな~!


20250804120244-motiri.jpg夏季限定トロピカルパフェ事件
(米澤穂信)

#小市民シリーズ#米澤穂信

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No.
192
聖☆おにいさん 22巻

今回だめ。久々にすごいツボついてきて困った。

20250802192201-motiri.webp

聖人ウォッチのメメントモリリマインド大好きすぎて画像用意しちゃうくらいにはダメ。なんだろ、なにがこんなにも私の琴線に触れたのか分からないんだけど、とにかく好きでこれ……。
「人は必ず死ぬ」の不穏文言と「再通知」のちぐはぐさがたまらん。あとイエスはもう死んでるからリマインドしなくていいのも笑う。聖人ウォッチのネタまじで全部好きだな~聖杯震わせる話であと1個くらいあってもいいくらいだよ!

一番大好きな人への気持ちをミレニアム単位で抑え込むヤショーダラーちゃん可愛すぎて愛い~!この漫画で頻発する『ミレニアム単位』って単語が大好きなんですよね私。規模感がまるでちげえ。我煩悩滅すの無理なのでほんとうに尊敬します。アラカン(阿羅観)もね、すごいよね⋯⋯。
元妃ライングループで「ギャーーー!」ってなってるの、いつも言ってるけど正しい黄色い悲鳴で大変に好感が持てます。キャーじゃねえんだギャーなんだよ(n回目)

わたくし、いえっさの宗教に疎いのでヨナさんの事を初めて知ったんですが、不遜すぎて面白い男ですねこの人。上司に歯向かうのとはわけが違う……親に歯向かうのとも違う……創造主に……噛みついている……。
色んな人がいるなあ、いえっさの方もぽむぽむ地蔵の方も。


20250803134859-motiri.jpg聖☆おにいさん 22巻
(中村光)

#聖☆お兄さん #モーニング

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2025年7月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

No.
191
皇后の碧


八咫烏シリーズを手掛ける阿部智里先生による新作読み切りファンタジーです。ハードカバーの本は買い控えないとなぁと思っていたんですが、ついね……惹かれてしまってね……。いや、惹かれたというよりはアレだなあ。

「また後宮モノなの!?!?」っていう興味。

だって八咫烏シリーズの始まりが後宮モノじゃん。またその手で来るのかっていうことに驚きがあって。それと「引き出し少なくない?」というネガティブな感情を持っていたところも多いにある。
でも同じものを煮詰めただけで新刊が出せるほどに世界は甘くないことは分かっている。だからこその面白さを確信して手を出しました。結果はご覧の通りです。


後宮モノって不思議ですね。きわめて局地的な鳥籠の中の話なのに、本人にとっては「後宮の敷地と価値観が己の全て」だから規模のスケールがグッと上がる。世界にとっては取るに足らない出来事でも、後宮の中では大事になる、なってしまう。良い題材だなと今作を読んで思いました。
あと読み手目線で言うと覚える事が少なくて済むのが良いですね。国と国でのああだこうだがメイン軸になると世界と用語を覚えるだけで手いっぱいなので。覚えたらめっぽう楽しくなるのは分かっているが!

今作で一番助かったのはアレです。登場人物の名前が簡素!覚えやすい!助かる!!横文字、ムズカシイ!
蜻蛉の精霊シリウス!炎の精霊フレイア!水の精霊ティア!
なんと分かりやすいことか……。
一方、主人公の名前がモロに日本人名だったのは違和感が少し強かったです。ナオミ。有名人を連想してしまって、挿絵にあった黒髪の少女が頭に残らなかったのが悲しい。ハナとかマイとかだったら別だったのかなー。名づけって難しいもんだ。


元素的なものから精霊と称する命が生まれるファンタジーな世界は寓話的で、文字だけで起こすとメルヘンな優しい色を想像してしまうのですが。初っ端からまあ、こう、ねちねちでしたね!種族の特質に合わせた価値観の違いや抗争に「まあそれはそう」と納得しながら読んでいました。火の一族と水の一族が仲良しこよしなわけないんだよなあ!生まれが違えば価値観も違うわけで、そこのあたりのモヤモヤはなかったです。どっちが正しいとか考えなくていい、どっちも正しい。
そんな世界観なのに、ナオミが足を踏み入れた後宮では全てが調和している。
その謎を探るのがとてもワクワクしました。ほら、前述で「生まれが違えば価値観も違う」って言っちゃうような頭カチカチ山なので私……。


主人公のナオミが頑張り屋さんなのも好感度が高かったです。第一の好感度上げ上げポイントはココ。

女官に戻りたいと伝えても、蜻蛉帝はきっと怒りはしない。その代わりに、先ほどのようにナオミに接してくれることは二度とないだろうし、興味を失ったような顔で自分を見返すであろうことを想像すると、そんなふうにがっかりされたくない、と思ってしまった。

好意の種、良い。
結果としてこの種は別の方向に花開く事になるんだけども、〝相手にがっかりされたくない〟という想いから関心が始まるのってなんか可愛らしくて胸がときめきました。いやーここの文章と感情すごい好きだなー。

登場人物みんながそれぞれに矜持や野心を持って行動していることにも心を惹かれました。お人形さんがいない。……おるけど、おるんだけども。
一番気持ちが盛り上がった場面は最終局面でナオミがフレイアを呼ぶところです。契約とは信頼関係である、という言葉も良かった。いいよねあそこ~……伏線回収するのは分かりきってたけど、すごくドラマティックだった。
だがしかし盛り上がりが連続する最終局面に至るまでの尺が若干長い……!阿部先生の小説ってスロースタートな気がするでホンマ。前も話したけど私は【烏に単は似合わない】自体は刺さってなくて、友人に乞われて【烏は主を選ばない】まで読んでやっと「おもしろい!」ってなったから。
あと最後の『皇后』呼びも精読しないと頭にクエッションマークが大量に浮かんだままですね。ふんわりとした理解のままにエピローグを読み若干の座りの悪さを感じていたんですが、他の方のレビューを見てようやく得心しました。もうちょっと、もうちょっと繰り返し言って欲しいぜ、「皇后」というモノに対する登場人物たちの価値観を……!

ページをめくる手がとまらない、という作品ではないものの、ちゃんと心に残る世界でした。なんならシリーズ化してくれてもいいのよ、と思っている。いや、風呂敷全部畳んだんだけどさあ!この世界観を1回ポッキリなのちょっともったいない気がする~。炎の精霊と水の精霊にフォーカス充てたりしようよ~!おもしろかったです!

追記:っていうかうわー!公式サイトのロード画面めちゃくちゃいい!読み終えてから噛みしめられるやつ!

20250725115015-motiri.jpg皇后の碧
(阿部智里)

#阿部智里

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No.
190
春期限定いちごタルト事件

再読祭り第一弾です。
巻末の版数を見るに、私が初めてこの作品に触れたのは2006年の事だそうです。
…………おおよそ20年前?すごいね……?当時は個人ブログや読書メーターとかで面白そうな作品を見繕っていました。他にも、少女小説やライトノベルを毎日1冊読んでいる友達がいたので、いっぱい参考にして素敵な作品にいくつも出会わせて貰ったりとか。今はちょっと灯台が多すぎてどの光を追えばいいのか分かんなくなっちゃってるとこある。ああ、昔は良かったトークをしてしまったぜ、いかんいかん。

話を感想に戻して。……と言ったものの再読だし概ね覚えているし感情の話はとくにないかも!感想を重くしすぎて再読祭りの腰が重くなってもアレなのでアッサリといきます。

おそらく以前も言及したんだけど、【おいしいココアの作り方】ってやっぱすごいね!?ココアの作り方で謎を一個作って短編にしちゃうんだもの!ぶっちゃけどうでもよくない!?シンクを全く汚さない状態でホットココアを作ることに関して思考を巡らせるとか、ある!?そこがねー、感心しきりですね……。あと答え自体もシンプルでとても良い。

しかしながら春の時点では小鳩くんも小佐内さんも成りをひそめる気がなくて笑っておる。秋冬はちゃんと小市民の星を目指していたんだな……。
それと直近で読んだ冬に比べてスイーツ描写が多くて嬉しかったです。小佐内さんがあの小さな身体と唇でちまちまとスイーツをつついて食べてる画、頭の中で想像するとかわいくて。小鳩くん目線だから描写がくどすぎず、さりとて簡素すぎず、過不足なく甘味の魅力を伝えているのがとても良い。

昔から常々健吾は良いヤツだなと思っていたんですが、やっぱりハチャメチャにいい男ですね。一本の筋が通っている。そんな彼に対してごまかしが聞かず、自身の心境を吐露する小鳩くんパートも〝今だから〟こその感慨があってグッと来ました。もう知ってるから……彼がノックアウトを食らった事件を……。

再読祭り楽しいです。
夏季限定は私が大好きな「シャルロット」。続けて読んでいきます。


20250719161758-motiri.jpg春期限定いちごタルト事件
(米澤穂信)

#小市民シリーズ#米澤穂信

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No.
189
多聞くん今どっち!? 11巻

いかん!踏み込んだ先のごまかし方が私が好かんやつになっておる!!いかん!
こう、これだから……少女漫画は10巻以上の継続が……むずかしくて……ッ!いや、両片思いが好きなのはそうなんだけど、ストレート告白モドキへのごまかし方に無理があると急に気持ちが沈んでしまって……。むずかしいなあその塩梅が。
あのシチュエーションで「観覧車怖くてヒステリー起こした女」認識は無理くない!?多聞!お前!や~~~ちょっと……しょんぼりしちゃいましたね……。


その一方で桜利くんの宣戦布告&逃げ道を用意しないドストレート告白が眩しい。

「俺を一番にしてくれ」
「俺 お前のこと好きだ」


この告白文のいいところなんですけどね、一人称と二人称がしっかり入っている事ですね!どちらかが欠ける事によって誤認が発生するじゃないですか。「──ああ、好きってアレのことがね!」みたいなさ…………鈍感が起こりえるじゃん……こと少女漫画の世界では……。ゆえにこのシンプル構文、大事ですよ!オレ オマエ スキ。

も~多聞くんのアレがあってからの桜利くんのコレだから私の中の天秤がぐらぐらと揺らついておる~!!少女漫画を読むにあたってヒロインとヒーローを応援出来なくなったら継続がつらいから……。多聞くんが約束された勝利で桜利くんが当て馬なのはゆるぎないもの。見ててきゅんきゅん出来るならいいんだけど、多分つらくなっちゃうなあ私。

それはそれとして、うたげちゃんが桜利くんの恋心に真摯なのが可愛いなあと思います。分からないまま拒否するんじゃなくて、ちゃんと知ってから答えを出そうとしているのが好き。
可愛いと言えば恋心を自覚した多聞くんも可愛いんですけどね……冒頭の失点がね……デカくてね……。ゆえに次巻の感想が発生するかどうかは不明です!なにかしら発散したくなったら話します。「多聞テメェ~~~~~!」って言ってる可能性は大いに、ある。


20250719161339-motiri.jpg多聞くん今どっち!? 11巻
(師走 ゆき)

#多聞くん今どっち!? #花とゆめ

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No.
188
邪神の弁当屋さん 2巻

「2巻読み終わったけど薄っすら忘れてることあるから1巻読み直そ~」って戻って良かった……。商人、タマゴ、食べられない。2巻に載ってた読み切りのファンサが1巻にあるとは……。初手で本筋と違う事を話しちゃう程度には衝撃を受けました。特徴のあるキャラ造形って大事ね。ほんのり後日談、良いものを見させてもらいました。

さて本題を始めるぞ。前回「お弁当要素が薄まったら悲しい」と申し上げましたが、杞憂となりそうでホッとしました。お弁当要素というか、「隙間を埋める」という行為自体が作品にとって大事な要素で、それは何処かしらであるだろうな、と。ソランジュが心の隙間から発生した存在であるからには、最期までこのテーマから逃げられないと思う。

この漫画において「食べる事は生きる事」っていう人間としてのゼロは語らないのかなーって思っていたんだけど、もしかしてそれも組み込んでいるのかと気になる事があって。ダリアさー、ご飯をさ、食べれてない描写があるじゃんね……。あれって一時的なものなの?長い間食べれてないの?どっち!?なんかこう、ダリアからハルヴァになってる示唆なのかなって深読みしちゃって……!すごい気になる~!
1巻においてダリアに対しての好感度は別に高くなかったんですが、2巻の過去絵エピソードを読むと愛しさが増しますね。レイニーに対して「>ちっとも変わらない」のひとことで済ますのが好き。


「家族みたいに抱きしめて」

人間の子供との話。ここまさに「隙間を埋める」って感じでいいよね……。コマ割りと絵の配置で少しの寂しさが出てるのがまたニクイんだ…………。人と人は隙間を埋め合って生きている。

クグロフさんの穏やかなイケメンっぷりが大層好みなんですが、チュンちゃんはクグロフさんちの子なんですのね!?なるほど、元飼い主からしてチュンちゃんは良き存在だな。今回も明朝体で喋るチュンちゃんが見られて嬉しかったです。かわいい。

いやしかしほんと、読み切りの段階では邪神のハートフルお弁当物語だと思っていたから、他の神様が次から次へと出てファンタジー色が濃くなるとは思っていなかったな~。想定外ではあるんだけども、もうすっかりレイニーのことが好きなので、食べ物要素が薄くなっても読み続けると思います。
だがしかしハートフルに頼む。レイニーが見せた闇の片鱗が薄まる事を願って。頼むよライラック~!


20250718183304-motiri.jpg邪神の弁当屋さん 2巻
(イシコ)

#邪神の弁当屋さん #ヤンマガKCスペシャル

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2025年6月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

No.
187
凪のお暇 12巻

泥沼にならずスマートに終わったの意外なんだが!?四角関係でもうひと盛り上がりあるかと思っていました。でもまあ恋愛がメインではないもんな。呪縛からの解放、そこが各々しっかりと書かれていて良かったです。


「好きならしゃーない♥」のマインドに陥りかける凪の葛藤、渋い顔をしながら頷いてしまうぜ……!彼女の恋愛脳なところ好きなんだよなぁ。好意はさながらに甘露、たやすくは抗えない。
そして凪以上に恋愛脳な女、夕。人中の伸び方おもろい。ここの話、凪・夕・慎二+過去時間軸で進行して鬼場転するのに読みやすくてすごいなあと思いました。見開きの中に三つの時間軸があったりするんだもん、なかなかやれないぜ。

夕さんね~~~~もうほんとずっーーーっと心配してきたんだけど、いい感じに着地して心から安心しました。途中めっちゃハラハラした!!フィルターかかりすぎなんだもん!二十数年経って外見が変わってない男はいねーのよ!!!そのフィルターが解けた瞬間の顔がなあ……ほんとうに……ほんとうに分かりやすくて……。でもそれを見てもなお「>でももうチャラにしよう」って言えた夕さんは強い人だな。そこからさらに魔法は解けるんだけども。

「でも どの世界線の私にも 必ず隣に 凪がいた」

読者からの嫌悪感ポイントこれでチャラでしょ……。夢想に夢想を重ねても絶対に我が子がとなりにいる。贈る愛情の形がひん曲がってはいたけれど、まぎれもなく愛していたんだな、と。『夕のお暇』は完結、呪いを昇華する流れがお見事で良かったです。
それと、夕さんとみすずさんのシガーキッスが今巻イチ好きな場面だったりする。なんだろ、いい意味で「── ウッ……!」ってなった。それこそ誤爆して照れまくった凪を見た慎二のように。心臓ゴリュッってした、このシガーキッス。憧れ~!


ゴンさんの出した結論が最初は意外だったりしました。私とは価値観や生き方が全く違うから理解が遠くて〝意外〟って感想がいちばんに出てきてしまった。でも、底抜けに明るく楽天的な人でも比較対象が出来る事で闇堕ちしちゃうんですね……。それに気づいてからは共感値が高かったです。
凪を見た事で慎二を見て、慎二というフィルターを通して鏡に映った自分を見る。これは苦しいよー。「>凪ちゃんのこと好きな俺ことがキライだ!」この一言、シンプル悲しい。そうなりたくなんかないじゃん。大好きだなーって思ってる人の事を考えると幸せハッピ~脳内物質だけ出てて欲しいじゃん。でもゴンさんはそうじゃなくて、どんどん自分が嫌いになっちゃうと。辛いし悲しいよなあ……。なった事はないから伝家の宝刀「分かる」が言えないんだけど……。答え出せて良かったね……。

「大好き」「はい」
「バイバイ」「はい」


ここ今巻で2番目に好きな場面です。静かで悲しいけど優しい。ゴンさんおつかれさま。


円!!!!!!
市川ちゃん改め円!!!!!!!!
ようやった!!!!お前はいい女だ!!!!

ここで「良い人」ではなく「良い女」って言っちゃう自分にナンダカナァ感もあるのだけど、素直に言います。
さて、彼女に対して「>嫌いじゃないけど好きでもないよ」「>同じ会社にいて欲しくない」とまで発言したわけですが。性差云々に関する自己矛盾に気付いて一歩踏み出した勇気ある人間に対して称賛以外の何をおくろうか。ブラボー……カンペキだった……。まずもって冒頭のお邪魔虫へのお誘いに綺麗な目で「>絶対嫌です」って言ってるところから良かったもんな……。
慎二との友情が続いてるエピソードも諸手を振って歓迎できる。モラハラクソ野郎の目を醒まさせたのは間違いなく市川円の存在だもの。いいよねー、慎二の「>お前の存在にマジでビビッた」っていう本音。男と女じゃなくて人間と人間になったふたり。この着地も大好きでした。


凪は随分と前から答えを得ていたので特に言及するところはないっちゃないな!慎二と過ごした鰯の夜もアッサリ目だったし。慎二側が引きずってて凪が凪いでるがこれまた面白い。この女、恋愛脳だけど恋愛に依存し過ぎてないから好きなんだ。アイデンティティを他者に委ねるのはやめたもんな。
結局どちらともくっつく事もなく終わったわけですが、不思議と不満はありません。タイトルに偽りなしで終わったから。恋愛はスパイス、本題は生き方と価値観。それぞれに得た答えに満足しています。

「私は私でいいもん」

お暇の総決算。ここで「本当は〝が〟って言いたいけど今はまだ〝で〟」って言っているのも好き。そんな綺麗に割り切れたら人生ストレスフリーよ。分かったフリをして生きていくのだ。いつかそれがホンモノになることを信じて。


自分、漫画で説教されるのあんまり好きじゃなくて。エンタメしてたいの。その先で勝手に気付きを得るからおしつけがましいのはノーセンキューなのね?その点で言うとこの漫画は、自己啓発と啓蒙の方に片足を突っ込んでいて少しでも踏み外したら合わない作品に化けていたと思う。
でも作中の人たちが絶妙に性格が悪くて。肉がある。感情がある。そんな彼女、彼らが苦しみながらも周りとぶつかって、支え合って、さいごには自分自身で壁をぶち破るのが気持ち良かったです。これから先も読み返したいと思える作品になりました。ありがとう大島凪。人生がんばって生きていこう!


20250629152608-motiri.jpg凪のお暇 12巻
(コナリミサト)

#凪のお暇 #A_L_C_DX

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No.
186
プロジェクト・ヘイル・メアリー(下)

いかん!感情を隠すことが出来ん!何も言いません!鍵は前回と同じく「黒い点々の名前」です!


20250622205802-motiri.jpgプロジェクト・ヘイル・メアリー(下)
(著:アンディ・ウィアー)(訳:小野田 和子)

#アンディ・ウィアー #早川書房


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