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2026年3月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
No.
213
邪神の弁当屋さん 4巻
物語を読み終えて、レイニーって名前が作品の雰囲気にぴったりで凄くいいなあとまず思いました。しっとりとした雨が降り注ぐようなリズムと共に寂し気な暗さが全体に漂ってるんですよね。お弁当要素がメインだと思っていた1巻の時代はとんと感じなかったんだけど、シリアスに振り切っていくに際してどんどん仄暗くなっていくんだよ雰囲気が。でも絵柄の可愛さとコミカルな間の取り方でそれを中和している。テーマ自体はホンマ重いと思う、この作品。
っていうか「愛だよこれは~~~!!!」という私の常套句しか言えなくて困っているんだが!?作中でもさんざ〝愛〟って単語が出てくるからこの感想を抱くのは合ってるんだけどさあ!普段すぐに「これは愛!」「これも愛!」ってガバガバ判定で涙腺を緩ませているので……なんかこう…………言葉が軽くなってしまってる気がする……!!でも愛なんだ……とても広い意味で……とても……。
愛といえば。3巻で突如として現れたパメラさんに対して「もしやレイニーとライラックを性愛の方向で進めるための示唆か……?」と警戒していたんですが、ただそれだけじゃなくてナタリオ殿下に対して大事なエピソードを進めてくれる子だったんですね。ライラックとイーゼルだけではナタリオ殿下の心は解けなくて、彼女が魂の半分を回収しに来てくれる事にはならなかったと思うので。なんで今ここにフォーカスを、と初読で思ってゴメンな……。
人間の心のスキマから生まれた化け物が人間を食らう事で心を知り、半化生の神様となった。そしてその愛を知らない化け物は愛の神様に愛を与えて貰って、他を慈しむ心を知る。でも自分にそれを教えてくれた神様は消えてしまって、だからもう〝自分の愛〟がいない世界から消えてしまいたい──というのがレイニーのバックグラウンド。ほうら愛の話じゃないか。
与えられて失って、誰かに与えて、それが還ってきて、愛とは何ぞやと自問自答した時に出た答えが素朴で好きでした。ダリアにライラックと共に過ごす日常に対して「>これが愛なら良いのに」と。
ライラックからソランジュへの愛、ダリアからソランジュへの愛、イーゼルが兄弟に向ける愛、パメラがナタリオに向ける愛、クグロフさまが人に向ける愛、ぜんぶ違ってぜんぶ良い。でも創造主さまがソランジュへ向ける愛だけは「それは違う」と。「>私を愛しているなら食べさせてくれ」という矛になったの、邪神ジョークって感じで良かったです。
そう、今作の創造主さま、あまりにも精神性がバブでいかにも神様~~!!!って感じが好きですね私!!超越したところにいるから人の気持ちが分からない化け物スレスレの神様好きです。でもそれにしたって謹慎が20年ちょっとって短すぎませんか?こらえしょうない。
あとねえ、クグロフさま格好良くて良かったですよね……。良かった……2巻の頃から目を付けていて……。ひょうひょうニコニコした男(神様に性別はない)が、いざという時に頼り甲斐があるのハチャメチャに好きなので。創造主さまに物申す時に手が震えてるのがグッド!口元笑ってるのに手が震えてるの愛おしすぎ。
おまけエピソードでキャラのやり取りがたくさん見れたの嬉しかったな~!作者様がキャラを愛しているのをすごく感じた。こういうわちゃわちゃはなんぼあってもいいですからね。クグロフさまはセクシー担当把握です。おてての仕草とかちょっとオネエですもんね。あとチュンちゃんはやっぱり良きものです。コケ。
「>ライラックという男は生涯独身であった」っていうモノローグでいろんなものを説明してくれてるの強いなあと感心しました。ライラックがレイニーを恋愛対象として好きだったこと、近い将来レイニーが神様に戻ってしまうこと、それがこの一文で分かる。直接的に言わないからこそ染みるというかな……。
私がよく言う言葉に「食べることは生きること」っていう文言もあるんですが、この作品はそうじゃないなっていうのは1巻の感想時点で言ってて。どっちかっていうと「生きているから食べるんだ」の方向性ですよね。食が細かったダリアも、生への活力を見出してからいっぱい食べだしたもの。食べる=命を繋ぐ=愛と生の話なのは分かる。
邪神の弁当屋さん 1巻感想より
この感想わりと的を得ていないか?当時言葉を残しておいてよかった、なんかすごいしっくり来てる。
冒頭で作品の雰囲気を雨に喩えたように、静かにまったりと楽しんだ作品でした。心のスキマにギュッと詰めてまた開きます。
邪神の弁当屋さん 4巻
(イシコ)
#邪神の弁当屋さん #ヤンマガKCスペシャル
No.
212
望月の烏(再読)
再読をいちばん楽しみにしていた巻です。二部の中で格別にお気に入りの話だったがゆえに内容をちゃんと覚えており、再読における驚きがなく感想は小粒になってしまったのですが!【烏に単は似合わない】の再演で抜群に面白かったもん~~忘れないよこの話は~~。
まあ初読は大事な要素を取りこぼして読んでるアホなんですけども。そんなこんなで再びの感想です。ちなみに雪哉派であることは揺らいでいません。
初読の私、あせびに心が奪われ過ぎている。いやでもさあ!怖いやんけこの女!!出てきたら警戒するってもんだよ!!再読にあたっては彼女のことをあまり気に留めないで良いのでノイズが少なかったです。
主に興味深く見ていたのは蛍の君。視点主ではないがゆえに描写されている内容が少ないんですが、それでも彼女の淡々とした仕草がこの世界への温度を表しているようで良いなあと思いました。
しかし振り返ってみると、視点主である桂の花が置物ポジション過ぎてちょっと可哀そうなんですよね……。何も知らなかったわけでしょう、アレやコレや。だからこそ視点主に選ばれているというのはあるんだけどもさー。五里霧中であった彼女の視点にいたからこそ登殿の儀で何が起こるのかとワクワク出来たんだけど、なんかこう、〝都合のいいお人形〟感が増幅されてしまったというか…………。
あーーーーそう、これアレだ、〝舞台装置〟!これですね。桂の花の状況とか心とか全く重要視されてなくて、物語の面白さと内容を分かりやすくするために置かれたポジションのままだったからだ!後の巻でアフターフォローとか何もないしな……。……なかったよね?これは再読しなければ湧かない感情だったなあ。小説というものを紡ぐ上で致し方ないことだし、四家の姫が〝舞台装置〟なんておあつらえにも程がありますが。桂の花にももう少し何か欲しかったな、と思いました。
紫苑の宮のことを〝澄生〟と捉えていた+【楽園の烏】がこの作品のあとの時系列だと理解していなかった+【亡霊の烏】の出来事を知らなかった事により彼女の行動に負の感情を抱いていなかったんですが、改めて見るとこの子のやってる事ってまあまあパンチが効いてますね……?国家転覆させようとしているクーデターですやんな……。や、今作だと「まずは中(貴族)から意識を変える!!」っていう枢木スザクムーブなんですけども。だがしかしそれが届かない事を知って、強硬策に変えたのが【楽園の烏】。短編・烏百花の【きんかんをにる】で奈月彦が感じていた「政治は自分よりも得意」であるという予想。あれはこの展開のための匂わせだったのか、と……。立ち回りという広義の『政治』ね。人心掌握を心得ている。
【望月の烏】感想より
初読の感想で自分はこう言っているんだけど、割とまあ的を得た表現なのではないかなー……。政治自体は上手くないのよ、あたりまえ体操。でも人の心を掴むことに長けているがゆえに、彼女の言葉に耳を傾けた人が動いて、その結果で惨事が起こる。
やーーーーーーなんか【亡霊の烏】を見てからこの一連の話を見ると紫苑の宮の肩を持つのはちょっと出来ないなあと感じる。紫苑の宮陣営を支持という意味でなら、まあ。私はすっかりと長束さまのことが好きなので。再読でめっちゃくちゃ株を上げたぞ。なんならシリーズの中でいちばん好きな人になってる疑惑もあるぞ。反転ってすごいですね。
凪彦のことは前回書いたことから変化がないので割愛。良い子です。「あなたが生まれて初めて、ようやくまともに言葉が通じましたな!」
ここの部分、コミカライズで表情見たくない?見たい。見た過ぎる。単純に私のヘキなんですけども。すっっっっっっごい満面の笑みをしてからスッって表情消すんでしょ?たまんないっすわ。なんだったら私は脳内でコマ割りをしてしまっている……場面の緩急が最高すぎて……。
ああーーー次の再読怖いなーーー……。最後が衝撃的過ぎたが故に道中をあまり覚えていないんですよね……。誰が悪いんだろうなこれは…………みんな悪くなくてみんな悪いのかな……もうよく分かんないな……。次の巻に対するワクワクよりも心の重さが勝る~。
畳む
望月の烏 /八咫烏シリーズ
(阿部智里)
#阿部智里 #八咫烏シリーズ
No.
211
一旦カフェにしませんか?(上)
陽の者と陰の者が午後三時のティータイムを楽しむほんわかフルカラー漫画。や~~~~一話見た時にビックリしちゃったよね、このクオリティがずっと続くの!?って。ビックリする事に続くんですわこれが……画面の手抜き一切なしで素敵カフェタイムが続くんすわ……。
お話とかキャラが好きなのもそうなんだけど、この作品で何より好きなのが色彩!!!色の使い方がホントもー私好みで~!ビビットでカラフルな画面が見ているだけで楽しい。そこに〝お菓子〟の要素を盛り込んだら、もう大好きになるしかないでしょう!
そしてこのお菓子要素も一ひねりあって、異世界が舞台ゆえによく分からん不思議素材が材料に組み込まれており出来上がりが魔法みたいな一品になる。それがまたフルカラー漫画と抜群に相性がよくて、お菓子の絵を見ているだけでワクワクとドキドキがある。画面から「美味しそう!」「楽しそう!」がこれでもかと伝わってくるんだなあ。
そしてこの「美味しそう」に魅入られてしまったのが陰の者のシュクレ家の皆さま。人間世界から魔法世界に転移してしまった陽の者・ウィートが新たに提案する『カフェ』に続々と人が集まってくる様子にニコニコしてしまう~。お菓子禁止の家であんなキラキラしたもん見せられたらそりゃあ……こうなる…………。\ こんにちは自我 / したところのロアのおめめの輝きめっちゃ良いよな……愛い……。
わたくし、長年『アプリコ』をハンドルネームに使っているので今作のアプリコちゃんが出て来た時「お名前いっしょ~~♡」ってテンションが上がってしまいました。親近感湧くやん。私は全国の『おもち』さんに親しみを感じているよ。白くてもちもちしたモノをアイコンに使っている人にも同様に。
閑話休題。ロア・びわセンと続々と仲間が増えていく中でアプリコちゃんが加入し、しばらくはこの4人のカフェ同盟で続いていくのかと思ったら息をつく暇もなくお兄ちゃんにもバレが発生する事態となり、漫画の構成が上手いなあと思いました。ここは明確に予想を裏切られたところだったなあ。だって日常型の作品だから、もっとゆっくりと事が進んでアプリコちゃんの掘り下げがあるかと思っていたんだよ~!ここね、不満とかじゃなくてビックリして面白かった!
何よりカラントお兄ちゃん愛いですよねすごくね。ぬいぐるみをおもてなししてもらった時のここよ。エッ あ⋯⋯ ほーーーーーーーーん
大好きすぎる。ここ見てコミックス買うの決めたところある。
「おもしろ~い」よりも「かわい~い」を主題に漫画を見ていて、でもそれ故に飽きずに画面を眺めていられるというか。フルカラー漫画って情報量が膨大で頭に入ってこない事が多く普段は読まないんですが、今作はフルカラーであることが武器になっているし画面のバランスも巧で読んでいて疲れないから題材と画面構成の相性って大事なんだなあと感じました。画面ずっとほんと楽しいのよ!特にお菓子を作る過程の絵が丁寧で好き、わくわく増幅。
感想を書くにあたって画面を見返しているんだけどホント画面がいいな……何回も言ってしまう……。色使いのお手本にしたい……大好き……早く二巻下さい……でも先生無理しないで下さい……出来ればアクスタも発売して下さい……応募者抽選はやめて下さい……よろしくお願いします……(強欲)。
一旦カフェにしませんか?(上)
(mato)
#一旦カフェにしませんか? #ジャンプコミックスDIGITAL
2026年2月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
No.
210
トリリオンゲーム 11巻
創作物において「全部欲しい」マインドで全てを掴もうとする強欲な女が好きなんですが、トリリオンゲームって桐姫がモロにそれでドツボなのも合わせてハルとガクもひたむきに全てを手に入れようとしてるからメイン登場人物の三人すべてが私のヘキで構成されている凄い漫画だったんだなあ、と最後のエピソードを読んでしみじみしました。ひと息で喋っちゃった。
前に言った通り、手放しで喜べる娯楽として純粋に楽しんでいたので感想を書いていなかったんですが、最終巻くらいはね、「面白かったー!」を残しておきたくなって。
やー……本当にずっと面白かった……!1巻1巻の密度がすさまじくて、満足度が高いままに走り抜け終わっていった。まさに〝娯楽〟として特化した現代向けの漫画と言えよう。だって、無理矢理やご都合な所が山程ある。それこそこの作品全編がハッタリで出来ている。だけれども、それを些細な事だと感じられるほどに演出が上手く、読者を全力で楽しませようともてなす構成が素晴らしい作品でした。無茶やってるのは最初の人力AIからそうだもん。無理ぞ。でも何故だか気持ちが冷めないんですよね~~~~……。無茶を通されてしまう魔力がこの漫画にはある。
流石の最終巻、頭の部分からフルスロットルである。巻冒頭恒例となった学パートは『約束された未来』の先出しビジョンだと思っていたのだけど、そうではなかった、と。ここ本ッ当にビックリした!マジか!ってなった!だってこれを頼りに読み進めてたんよ!だけどこの未来が夢だったと提示された事により、これから先11巻で起こる内容の全てが確約出来なくなったわけで!勝利が約束されているわけではない、これってすごくドキドキしますね。でもあとちょっとだから……あとちょっとだからこの不確かさに耐えきれる……ッ!漫画の構成がお上手だよホント~!
桐姫は一見して不気味で信用出来ないところもあったんだけど、このセリフでわたくし陥落でございます。ガク貴方とても素敵よ。本当に好きになっていた世界線もあったかもね。
ハルが、いなかったのなら。
乙女やーーーーーん!!
いやもうずっと桐姫のこと好きでとっくに落ちてはいたんだけどもさ、これはトドメのトドメでしたね……。いいなあこういうオンナ。桐姫にとってハルが好きっていうのは心にある大事なもののひとつなんだけど、大きなモノを手に入れるためだったらその気持ちすらも偽って踏み台に出来るっていうのがすごくすごく格好いいなって。恋愛に心をコントロールされている女の子も好きだが、桐姫みたいに恋愛を投げだせる女もまた好きなのだ……。恋愛が強さになるか弱さになるか、それはケースバイケースだからね。
ガクと桐姫の結婚やなんやかんやがあって迎えた最終局面。今までの人たちが終結してどうこうっていうのは想像できていた展開なのだけど、やっぱり気持ちが昂っちゃいますよねえ!これこそ王道。
株式市場の話はそれなりに分かる程度の知識を持っているのだけど、『ホワイトナイト』って単語はいつ見たって格好いいなと思う。「ホワイトナイトに名乗りを上げ敵対的買収を阻止」って文言になぜかそそられてしまう私です。そこに感情があるから……人と人との助け合いとか仁義があるから……。
閑話休題。
世間を巻き込んだ札束ビンタ、株価操作の事を考えるとまー褒められたものではないんだけども、そんなきれいごとではトリリオンなんて目指せませんからね。でも私がこの世界の住人だったらハルのアンチだった自信がある。良かったフィクションで。
最後の最後、黒龍家会合での桐姫の「>どうみてもそうじゃない」の前後4Pマジで良かったッスよね……。良かった……格好いい…………一話の切り時…………ページめくりの妙……良。話も上手ければ漫画も上手い……ほんとうに……良…………。
ここからハッピーエンドになると思ったらハルがまたいなくなってさあ!でもさあ!また仕事しててさあ!そこまではいいんよ、いい引きだなーくらいだったの。
──時計が……時計がね……。何年も何年もかかってハルの時計を取り戻したと。1巻で起こった大事な事を、最後の最後に回収してくるのズルくないですか。読者が忘れていたことをキャラがしっかり覚えていて、ちゃんと届けに来るのズルくないですか。「伏線っていうのはこう使うんだよ」と言われた気分です。
全11巻、ずっとずっとずーーーっと楽しくて最高のエンタメ漫画でした。大好き!
トリリオンゲーム 11巻
(コミック:池上遼一 / 原作:稲垣理一郎)
#トリリオンゲーム #ビッグコミックス
No.
209
コンビニ人間
まず私の結論から発表しようか!
これはハッピーエンドです、ハッピーエンドだと思います私は!
……このねえ、どうしようもなく考え込んでしまうラストがたまらなく良いですよ……。スタンディングオベーション、涙を流しながら迎える完全無欠のハッピーエンドがいちばん大好きなのはそうなんだけど、今回のように人によっては全く感じ方が違う終わり方をする作品ってのも良いものですね。
家族の本棚にあったので拝借してきた本作。〝コンビニ人間〟とはなんのこっちゃら?と思っていたらマジで「コンビニ人間だぁ……」ってなるから握力がつよぉい……。冒頭の数十ページでここまで力強い興味にそそられた作品って今までそんなにないかも。少なくともここ最近読んだ作品の中では随一でした。
普通になれない主人公がコンビニ店員というカタチを摸倣する事によって世界とのつながりを得ている。一言で説明するとこうなんだけど、これが本当にガチで、マジで、本気のソレで、どうあがいても〝普通にはなれない〟というエピソードがページをめくるたびに積み上げられていく事によって読んでいるこちら側にも毒ダメージを与えてくるんだよなあ……。それと同時に「普通とはなんぞや?」という問いをずっとこちら側に訴えかけてくるんだ。
一歩間違ったら人ってこうなる……という言葉を書いてしまって思ったんですが、主人公の擬態の中にあるモノを私は「間違っている」と思っているからこそ、こう言っちゃってるんですよね。やばいな、自分の価値観曝け出し大発表会になってしまう、ごめんなさい引かないで下さい。
嫌だなー……私これに対して間違ってるって思ってるのか……ヤだな……でもさあ、こうはなりたくないんだよ。だって絶対生きづらいじゃん。小鳥が死んだら「食べればいいじゃん」って思って、誰かが喧嘩しだしたら「殴って黙らせればいいじゃん」って方程式が秒で出てくるの、ヤじゃん。
でも世界にはこう思ってる人がいてさ。それに対してどうすればいいのか、どう思えばいいのかっていうのをすごく考えてしまった。妹みたいに「治してもらおうよ」っていうのが私の立ち位置だと思う。皆が皆ありのままに生きていけたらそれがいちばんいいけれど、多に属せない個があるっていう事が社会って難しいなあと思います。
しかして一方で、主人公から見えている世界が静かで真っ白ですごく好きだ。外から人が入ってくるチャイム音が、教会の鐘の音に聞こえる。ドアをあければ、光の箱が私を待っている。いつも回転し続ける、ゆるぎない正常な世界。私は、この光に満ちた箱の中の世界を信じている。
〝教会〟〝光〟っていうキーワードでコンビニというものに救いを求めているのがありありと現れていてとても良い。コンビニに対してそんなこと思ったことないよ、深夜のコンビニの煌々とした明りは好きだけど。みんなが寝静まった深夜、あそこだけ世界が動いていて他の何かと繋がれている感覚がして好きでした、病んでた時。……人それぞれの信仰がコンビニにはある……のか……?
あとここ、明らかに「風向き変わって来たな……」って台詞でゾクッとした。「身体の中にコンビニの『声』が流れてきて、止まらないんです。私はこの声を聴くために生まれて来たんです」
ダメとダメが合わさって、なんとかアレコレ乗り越えて普通になる、そんな事を途中まで想像してたのよ。いやいやでもそれは難しいのではないか?と訝しんできたら、斜め上を行く未来をお出しされて空いた口が塞がりませんでした。
でもこれは私にとってハッピーエンドだから。前向きだから!
頭から尻尾まで問答無用で面白い作品でした。コンビニ人間の誕生に祝福を、未来に幸あれ。
コンビニ人間
(村田 沙耶香)
#村田沙耶香 #文春文庫
2026年1月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
No.
208
十角館の殺人
孤島での連続殺人というクローズドサークルの全ての祖、『そして誰もいなくなった』のフォーマットに則られた作品である本作。去年末に地上波再放送があった事により再熱された評判を小耳に挟み、手に取りました。
〝 映像化不可と言われた── 〟
気になるじゃないですかこんなこと言われたらさ〜!現代が舞台の人死が起こる作品にめっぽう弱くなっているワタクシですが、今回は興味の方が勝りました。
そんなこんなで1日で読破した感想です。いくら昔の作品といえど、ミステリーの話題をおっ広げにする程ノンデリではないので隠します。
小説においてページめくりの概念を意識した事がなかったんですが、これ、漫画と同様にめくり演出大事ですね!?!?まずそこ!!まずこれ!!「ヴァン・ダインです」
感情のボルテージ最高潮でしたわ…………。これには驚き……これには納得……そりゃあ「映像化どうするの!?」としか言えない……。騙されました……普通に騙されました……ブラボー……。
クローズドサークルでの殺人ゲームといえば私にとって『インシテミル』が特別好きな作品で、この『十角館の殺人』に対しても「インシテミルみたいだな〜」と思いながら淡々とページをめくっていました。いや、こっちのが先なんですけども。謎の既視感とでも言うかな……だがしかしそれがあったからこそ、数々の予定調和にそんなにも荒立たなくて助かりました。何をしたって人はたくさん死んでくんだ、いちいちショックを受けてちゃいけねえ。……だがしかしそれ故に、「最後のドンデン返し」「映像化不可」の評判を聞いていなかったら脱落していた可能性もあるっちゃあるのだけど!それくらい平熱でした。
でも途中からは、ミス研の誰が最後に立ってるかが気になってしょうがなくて!半分過ぎたあたりから休憩を忘れて読んでしまったぜ……。お気に入りのエラリイが最後まで見れて良かったです。余裕のある伊達男、すき。
殺人の動機も、皆が論じていた父親の復讐説が正解ならあんまりにも薄っぺらではと思っていたんですが、蜜月状態の恋人を失ったのなら暴走するのもさもありなんよ。一気に腑に落ちて気持ち良かったパートのひとつです。
でも、ヴァンによる『犯人達の事件簿』状態はちょっと笑っちゃった。やることが……やることが多い……!よくもまあやり切ったな……すごいよお前の復讐心はホンモノだよ。
冒頭のボトルメールも最後の最後に良い仕事してくれますね。神だけではなく人間・島田もおそらくは見透かしていたわけで、超常現象に委ねる事なく裁きは行われたんでしょうが、他人からの告発で終わらない最後だった故に後味が良かったです。や〜〜〜これ島田さんにつらつら語らせるパートあったら読後感ぜんぜん違っただろうな〜!終わり方すごい好きですホント。
不屈の名作っていうのはやっぱり面白いんだなあ。良いクローズドサークルでした!
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十角館の殺人
(綾辻行人)
#綾辻行人 #講談社文庫 #館シリーズ
No.
207
ハクメイとミコチ 14巻
急に話の引き出しを増やすんじゃないよォ!!!!!!!
ビックリした!!何!?なんなの!!既読の皆さんはお分かりですね、私が【第116話 かたつむり工房】の話をしていることが!帯に「>本誌掲載時に話題を呼んだ──」ってあるけど、そりゃあそうよ……これは……そうよ……。途中までミコチの百面相にニコニコしながら読んでいたのに、夜の散歩でああも急ブレーキがかかるとは思いませんでした。
眼光が鋭いネフルさん、好奇心旺盛で自分の前しか見えていない典型的なアーティストタイプだと思っていたらそうではなく。いや、まごうことなきアーティストなんだけど、天才型の。でも彼女の眼が捉えているのは世界の〝すべて〟で、それを落とし込んだ心はあまりにも騒がしくて、鋭くて、正気と狂気のはざまに居た。あそこのページ、コマ運び完璧で最高すぎやわ……。ネフルさんの慟哭が読んでいるこちらの心まで突き立てて来る。そしてふっと冷静に戻った瞬間の切ない笑顔と口をついた言葉よ……。「>儂は君が羨ましい」。それを受けたミコチの表情もなあ~!!飲み込め切れていない困惑の顔がな……切に迫ってくるのだ……。「作ることでしか 生きていられないだけ」
「感じたことを吐き出す手段が それしかないんだって」
「そんな風に私は 服を作れない」
「私⋯⋯目標を失っちゃったみたい」
この漫画でさあ……モノ作りしてる人間を刺してくるエピソード来るとは思わないじゃんね……。不意打ちも不意打ちだったんだ……胸がきゅっとなったんだ……。好きなだけじゃ足りない、憧れだけでは掴めないものがある。それをこれでもかと見せつけてくる話で、その切なさが大好きでした。感情の魅せ方がほーーーーんと良かった!ここ最近読んだ漫画でいちばん良かった!!見開きってこういうもんだよ!!!
ヒートアップしちゃったので落ち着いて俗な話でもしましょうか。
ハクメイのお父さん、好みです。あの……目元に皺がある髪の毛長めの男……好きで……その……ドンピシャなんですよねロカパパンね……。いや、ハクミコにおける好みの男ナンバーワンは仲良し組の棟梁ナライさんだけども。
話をロカパパンに戻して。……いや別に戻しても話す事はあまりないな?ハクメイと会える日楽しみだなーってカンジ!
ジャダさん好きなので出てきて嬉しい。〝ω〟くち可愛いよね。友を励まそうとして空回りする姿もなんとも似合うぜ……。このミコチの落ち込み、そこまで尾を引かないと思っているんだけど、尾を引くとしても色んな子が代わる代わるアドバイスする展開になったらそれはそれで面白そうだなーと。センとか特にみたいな~!
しかしまあミコチを見てると「得意な事とやりたい事は違う」という事を改めて認識します。だってお店出来るくらいお料理上手だったらそれ極めたらよくない?でもミコチが好きなのは服を作ることなんだよね。趣味を仕事にしたい……みたいな欲を持っている訳ではないけれど、憧れの星に手が届かないことが分かっちゃったから、気が抜けてる今。よくよく考えてみると贅沢な悩みではある。どう折り合いをつけるんだろうな~。
ハクミコはまったりと読んでるので「次も楽しみだなー!」みたいなテンションにはならないんですが、今回は圧倒的に「次も楽しみだなー!」です。
⋯⋯っていうかよくよく見たら13巻の感想ないじゃん!ほんまにか?牛の描写すごいの話しなかったのか私。なんか書いた気でいたな……。
ハクメイとミコチ 14巻
(樫木 祐人)
#ハクメイとミコチ #ハルタ
No.
206
キッチン
恋愛が主題になっている小説を買って読むという事がほぼありません。なぜならば同人小説で満たされているから……。私が恋愛ジャンルで重きを置くのはキャラクターであるがゆえに、知らない人たちの恋愛いざこざを小説から摂取したい欲がないのです。昔はビーズログ文庫をつまみ食いしてはいましたが!それでも読むのはファンタジージャンルだったから、現代を舞台にした恋愛小説に手を出したのは人生で初なのではないだろうか。
なんで親しみのないジャンルに手を出したかというと、『日本語表現インフォ』で言葉漁りをした時にピンとくる文章が吉本ばなな先生である率が非常に高くてですね。ゆえに「物語を楽しむ」というよりは「文体を楽しむ」ために本を開きました。
率直に言ってしまうところ「傷の舐め合い」で物語が幕を引くのか、と二人の生末をどこか遠いところから眺めていたんですが、主人公が思ってもいなかった行動を取るところでグッとストーリーが心の距離を縮めてきてビックリしました。アレはなあ、すると思ってなかった!遠距離カツ丼デリバリー。相手にあったかくて美味しいもの食べて欲しいな、って気持ちはさあ、純粋すぎる愛だと思うんだよね……。
だから「傷の舐め合い」なんて言葉はふさわしくなくて、お互いがお互いで暖を取るような温かい形で未来に繋がって良かったなーと心から思えました。前半はホント文体を観察するが主目的だったけど、起承転結の転になってからはハラハラドキドキ読み進めていたもの。
あとこの作品、空気と温度がすごく伝わってくるから好きです。寂しいは寒いし楽しいは温かい。恋愛主題小説への苦手意識はまだ残っていますが、吉本ばなな先生の作品は好きだなと思えたので別の作品にも手を伸ばそうと思います。
そして、実は表題作じゃない方、『ムーンライト・シャドウ』がめっぽう好きだったりするんだなあ!吉本ばなな先生ってアレなの?人間のやさしさに触れる話を書くのがお得意なカンジ?まだ二作品しか読んでないから断言出来ないが!
中でもこの一文がすごく好きで。手を振ってくれて、ありがとう。何度も、何度も手を振ってくれたこと、ありがとう。
心に残したくなる文に出会えたらもうそれだけで人生の宝だから。ジェットコースターのような感情の波はなかったけれど、じわじわと染みるような熱が持てるお話でした。よかったなー……。いやほんと、「面白かった!」「良かった~!」っていう勢いじゃない、もっと静かにストンと心にふんわり落ちる感じ。滋養たっぷりってこういうことだな~。
キッチン
(吉本ばなな)
#吉本ばなな #角川文庫
No.
205
鹿楓堂よついろ日和 22巻
角崎さん落とせる乙女ゲームどっかに落ちてないかな……。
そんなことを思ってしまった二十二巻です。シゴデキ顔面ヨシ黒髪真ん中分け性格お茶目ってちょっと私特攻が過ぎるので……ほんとに……。別にそんなに出てこなかったんだけど、数コマ出てくるだけでカッコいいから困るんだよ角崎さんは……。シゴデキ……いい上司……。
メロってる私は投げ捨てて本編の感想をば。「>無駄な嵐は起こらないように」の願望通り、不可抗力のトラブルによるピンチという展開なので安心しました。ここで身から出た錆とかやれらたら、ちょっとこう、椿くんと佐々木さんでそれはちょっと、ってなってしまうので。この二人はそれぞれにコミュニケーション苦手人間だから幼き者を見る感じで応援してしまうんだ私は。
佐々木さんの癒しオーラというかピュアッピュアの源泉ってどこにあるんだろうな、と思ってたらなるほど、自然が豊富な大地で育ったがゆえの。天然培養であることが知れて納得みがあります。
そして憧れを追いかけて走り続けていたがゆえに見えていなかったものがある、と。
正直なところ、ゲストの心理的成長に丸々一巻を費やすとは冗長だなと感じるところもあるのですが、ゆっくりのんびりとやったからこそ椿くんの成長と鹿楓堂の器のデカさ及び安定感がしっかり描写出来、かつ次回への種まきも終わったのできれいな構成だと思いました。ただバンチ本誌で読んでたらこう思えなかったかも~!1巻をノンストップで読めたからこその味な気がする!まあ別に早急に進めて欲しいことはなにもないのだが!……あれだ、鹿楓堂とお客様系の話がひとつもなかったから、そこが物足りないのかも?なるほどですね~。
綾のアフターヌーンティー堪能しているお客様の中に鹿楓堂の常連さん交じってるのが嬉しくてほっこりしちゃった。着物のおばさまと姪の方!長期連載ならではの小ネタよ。
わたくし抹茶が得意でないがゆえに「食べたーい!」の言葉が出てこないのがなんだか悔しいですね。塩豆大福はいつでも食べたい。なんならこの漫画買った時に和菓子食べたくなったので行きつけの和菓子屋さんで大福を買った。美味しかったです。
鹿楓堂よついろ日和 22巻
(清水ユウ)
#鹿楓堂よついろ日和 #バンチ

