カテゴリ「小説」に属する投稿[28件](3ページ目)
No.
88
烏の緑羽
「分かるけど分からねェ……!」が解消されるかと思ったら、フォーカスされた先が長束さまだったので色んな事が分からないままっていう~~~~!【楽園の烏】の感想でも言及したのですが、今回も読書エンジンがかかるのが遅くて前半は休み休み読んでいました。しかし中盤になってからは何もかもが気になってきて、就寝時間を1時間半もオーバーした形で一気に読了してしまい。八咫烏シリーズ、最初のパンチが本当に弱いんだけど、前半の出来事が遅効性の毒みたいに一気に巡り始めるから凄いなあと思います。いやだってこのタイミングで路近の話聞きたい人とかいる!?!?おらんやろ!!けれど、長束さまと路近周辺を掘り下げる事によって、山内の裏の部分とかの世界観がこれでもかと感じる事が出来たので、必要な内容だったなぁと考え直しました。というか、雪哉一人に肩入れせずに済む。
【烏の緑羽】は長束さまのオムツがいかにしてとれたか、というのをメインテーマにしているようで全然そうじゃなくて、山内のいびつさを改めて叩きつけたかった+サブの登場人物について掘り下げる事で、雪哉と対立している面々への共感力を上げたかったのかなって。そもそもとしてタイトルが……だし!【追憶の烏】で雪哉の心境だけ知っている状態で、いかにして【楽園の烏】に至ったかが描かれたら、大多数の読者が雪哉の選択が正しいと思ってしまっていたと思います。前作主人公だしね。長束さまと緑寛が掘り下げられた事によって、ああいう環境で育ってきて、その上での信条があるから雪哉と対立したんだな、という納得力が上がったというか。ネット上の争いごとでもそうですが、片方の事情だけしか知らないとかフェアではありませんからね……。両者の下地をしっかりと読み込めた事で、これから先に何が起きたとしても片方に過剰に肩入れせずに済むのは助かります。とくにわたし、めちゃくちゃ感情で物を言うので!分からないものは怖いの精神なので!「お前――このためか」
その顔を見た瞬間、これまでどうしても分からなかったことが、ようやく分かった。
「このために、私に仕えてきたのだな」
―第六章 翠寛
ここからの流れ、パズルのピースがカチッとはまって脳汁がぶわーーーっっと出る感じが堪らなくて大好きです。しびれた。
緑羽視点で路近の過去を追ったものの、追えば追うほど意味が分からない存在で霧は濃くなっていくばかりで。早い話がサイコパスですよね彼……。精神疾患をバシッと決め打ちしていうの、物語上の登場人物とはいえちょっと憚られるな~~!路近自身が望んでそうなったのではなくて、生まれ持った気質だからなおのこと。
それはさておき。理由が理解出来たからといって、それを心で咀嚼出来るかどうかは別だな、と路近を見て感じました。先のように”納得力”という言葉を私はよく使いますが、彼の事は分かったけれどその心の在り方に納得は出来ないというか。霧は晴れども、そこには沼が広がっていてこれ以上は追えなかった。そんな感じです。これを側における長束さまは凄い人だよ……すごいよ……。奈月彦を全肯定するだけの人だと思っていたら、今巻で一気に深みが増したなあ。なんせ私、雪哉の主どこ行った!?!?奈月彦だけじゃなくて浜木綿もいないし私の大好きなますほさんもいないし更には澄尾すらいないんだが……?いないんだが…?どういう事なの…なんなの…全く分かんない…作者さんがこの混乱を狙っている事だけは分かるんだけど。ますほさんとか澄尾いるとなんかちょっと安心するから長束の方出すのがまたいい塩梅だわ…。その長束様もよう分かんないとこにいるしさあ。
って【楽園の烏】の感想で言うてるから!!長束さま出てきても全然安心感ないって半ばディスってるから!!ごめんね!!しかし公式でバブちゃん判定が出た事により、この時感じた私の長束さま評は間違ってなかったんだな、って。
次巻はようやく浜木綿さん視点が来るのでしょうか。正義の反対は悪ではなく別の正義、というのを痛い程描いている第二部。登場人物の行く末というミクロ視点も気になりますが、八咫烏の未来というマクロ視点でも続きが気になっています。栄えなくてもいい、穏やかな未来がありますように。
烏の緑羽 /八咫烏シリーズ
(阿部智里)
#阿部智里 #八咫烏シリーズ
No.
87
追憶の烏
前作までの間に何があったのか分かるけど分からねェ……!そんな感じです。加えて衝撃のラストに全部気持ちを持っていかれたので、間の出来事への印象が割とすっぱ抜けている。あのラストに驚かない人はいないでしょう……露ほども思い浮かばない再登場だったよ……!
若宮の心変わりというか、件の遺言に雪哉の思いと同じく一瞬だけ「なんで!?」と思ったのだけど、すぐ腑に落ちた、のち感傷的な気持ちになった。家族を得た事で、『金烏』から『ただの奈月彦』になったんだなあと。……いやもしかしたら山内を考えての事かもしれないけれど!今のところ私はこう考えています。だから、金烏に仕えていた雪哉が浜木綿さんと袂を分かつのは至極真っ当な事で。ただ、理解は出来るが感情が追い付かない……!分かるけど分からねェ!紫苑の宮は何を思っているんだい!憎悪の英才教育を受けたのか!?
改革には痛みを伴うもの。現実の歴史でも存分に語られていますが、その痛みは先の合戦で既に終わっていると思っていました。猿や神といった”外敵”と一致団結して戦う事によって、分裂の危機を乗り越えたと勝手に感じていた。しかしまーーーーーそんなはずはないのよねえ!!敵がいなくなったら新しく敵を作るだけ……というサイクル、日常生活でも心当たりがありすぎてしまう。奈月彦、いかんせん有能な身内に甘くて一度でも敵/無能と認定した者にめちゃんこキツイな、と思っていましたが、きっと同じ事を色んな所で色んな人が思っていたんでしょうね。だって私【烏に単は似合わない】の奈月彦めちゃくちゃ嫌いだもん。なんやねんコイツ!って感じでした。彼の少し深い所に入らないと、彼の気持ちは全然全くサッパリ分からない。そして分からない存在は、こわい。大人たちと女の憎悪が上手い事噛み合って奈月彦の暗殺が成功してしまったわけですが、その背景には割と納得の気持ちでいます。繰り返すけど最初奈月彦嫌いやってん!!その感情を思い出すだけで、四家の方々の気持ちと彼女の気持ちがちょっと分かるのよ……。しかし納得はしているけれど、だからといって死んでもいい訳ではない。奈月彦に限らず誰でもそう。そこの辺り、胸がモヤモヤします。これも『追憶の烏』における「分かるけど分からねェ……!」の要素だなあ……。
【楽園の烏】に至る雪哉の行動は全部納得しかなかったのだけど、奈月彦の気持ちだけは推察するしか出来なくて本当の所が凄く気になる。語られる日が来るのだろうか。語られたら、私の心は誰に傾くのだろうか。
それにしても雪哉、ずーーーーーーっと行動がブレない。家族が大事だから山内が大事。その山内を大事に想っている金烏である奈月彦が大事。いや、奈月彦個人の事もきっと大切に思っていたと思う。ただそれ以上に、金烏としての彼に焦がれていただけで。心の中に柱がキチッとあるキャラは、一見意外とも思える行動をしてもちゃんと理由が分かるから良いですね。
っていうかあせび~~~~~~!!
あせび!!お前!!!退場したはずでは!!すごいなあこの女!!!自分が成り上がるために何もかもを道具にする系の女!!すごい!!
あせびの凄い所は、機が熟すまでの種まきをせっせとして怠らない所です。【烏に単は似合わない】でも仕込みを存分に行っている事は描写されていました。その下地がある故に、最高のタイミングで最悪の花を咲かせられるように潜伏していたんだな……と急な再登場に納得するしかない。すごい女だよ……お前人狼ゲーム得意だろ……感情で吊り逃れ出来るタイプの狼だよ……いっそ見習いたいぜ……。
畳む
追憶の烏 /八咫烏シリーズ
(阿部智里)
#阿部智里 #八咫烏シリーズ
No.
86
逆ソクラテス
最後の話ぼろくそに泣いてしまってダメ~~~~~~~。
小学生たちが理不尽を強いてくる大人や価値観に立ち向かう連作。主人公が子供なので、いささか感情移入がし辛いのと他力本願の「スカッとJA〇AN」系な展開がいくつかあり、not for me 寄りの作品になるかと思いながら読み進めていました。でも最初から所々でキチンと胸を刺してくるんですよね……大人になってからのほろ苦さとか、矯正のし難さとか。「そうだよ、永遠。
バスケの最後の一分が永遠なんだから、俺たちの人生の残りは、あんたのだって、余裕で、永遠だよ」
―アンスポーツマンライク
最初の丁寧な仕込みがのちに爆発するタイプの話だったな……って『アンスポーツマンライク』を読んで感じ、そこからの『逆ワシントン』のラストで涙腺ガバガバのハイドロポンプよ。幼いころの失敗は大人になっても引きずる、っていうのをちゃんと描写した上でのチャレンジしようぜ、リトライしようぜ、というメッセージにとても励まされる。あと、他人に優しくするのは自分のため、って価値観も好きです。優しさの連鎖が返ってきて欲しいわけじゃなくて、何をしてくるか分からない他人が怖い、って事から発した言葉なので猶更実感がこもっているというか。
頑張りが必ずしも報われるなんて、都合がいいお話ではあるのだけれど。紙の上でくらい、全員がハッピーでもいいんじゃないでしょうか。
逆ソクラテス
(伊坂幸太郎 )
#伊坂幸太郎
No.
85
アイネクライネナハトムジーク
恋愛が主題の連作。現代が舞台の恋愛って嗜まない事が多いのですが、今作は甘酸っぱい気持ちをあちこちから色んなシチュエーションで摂取出来て楽しめました。食わず嫌いはダメね。
支流が海に繋がる伊坂幸太郎節全開の最終話はお見事ではあるのですが、時系列があっちゃこっちゃいくのが少しだけ読みづらかったです。お話はすっごく綺麗に繋がっているんだけども、何年前を連発されると頭こんがらがってしまう~。
誰かの頑張りが別の誰かに時を越えて繋がる。ささやかな一手が大きな一手だったりもして。人との繋がりを信じ、大事にしたくなるお話でした。
アイネクライネナハトムジーク
(伊坂幸太郎 )
#伊坂幸太郎
No.
26
巴里マカロンの謎
じゅ…十一年振りの小市民シリーズ……!!!アンテナ張ってなくて新刊出ていた事に1年気が付かなかった~こういう時に情報の受動喫煙が出来るTwitter類やってたら直ぐ気付けたんだろうな、と思う。都合のいい時だけSNSの恩恵にあやかりたい。
冬季限定シリーズじゃないって事は冬季は冬季でやっぱ構想あるんかな!?と次作に期待出来るのでなんかお得な気持ちですね。巴里マカロンも大分面白いお話だったので冬季と銘打っていても私は違和感がなかったかなあ。
十一年振りに読む小鳩くんと小佐内さん、特に小佐内さんが「こんな可愛かったっけ!?」ってなる事が多くてなんかにこにこ…とクエッションマーク浮かべながら読んじゃった。彼女は”羊の皮を被った狼”の印象なので…。「……ごめんね小鳩くん。今日は彼女の資料を持ってきてないの。
小鳩くんがそんな興味を持ってくれるとは思わなかったから」
「いや、それはいいんだ」
「月曜日には持っていくから、それでいい?」
「いや、いいんだ」
「明日でもいいよ」
「いいんだ小佐内さん、ありがとう。気持ちが嬉しいよ」
ここの推し活する小佐内さんと紳士な態度で拒否する小鳩くん可愛くて超好き。マジで小佐内さんこんなにも可愛かった??スイーツと復讐が絡むと豹変するのは覚えてるけどこんなにも可愛い印象なかった……。そして妹分が出来てその距離感に困惑しつつもちゃんと仲良くしてあげる小佐内さんもめちゃかわだったし。
あと肝心のストーリーと謎、表題のマカロン事件は割と無理ないか……?と思ったんだけどそこからトントンと展開していくとは思わず最後までそれぞれの謎を楽しく読めた。人の死なないミステリーはやはりいい……米澤穂信の現代モノは安心して読める…いやたまに鋭い角度でえぐってくるけど…ボトルネックとか…。
作家傾向に関連して、乙一はもうえぐってくるとかそういうやつじゃないからもう少し心鍛えないと再読無理だな……ZOO大好きだったんだけど今は無理、たぶんウッ!!ってなる。 「勘のいい人は好きよ。わたしの事を見抜かない限りはね」
良かった~~~ちゃんとブラック小佐内さん見れた~~~!!ずっと可愛い仔羊ちゃんかと思っちゃった!!!小鳩くんはもう終始謎を解きたくて仕方のない小鳩くんって感じで私の印象とズレてなかったから自然に読めたんだけど、小佐内さんは本当ずっと可愛くて困惑してたからこのセリフ見た時凄く安心した。私の知ってる小佐内ゆきだ。
また近いうちに冬季限定シリーズ出るといいなー、シリーズもう一回読みなおそ。「シャルロットは僕だけのもの」が特に好きです。
巴里マカロンの謎
(米澤穂信)
#小市民シリーズ#米澤穂信
No.
25
死神の浮力
アホみたいに泣いた。あまりにも泣きすぎて夜中にパニック発作起きかけた。いやまあ死が題材だからキツイの分かってたんですけど、心の筋トレだと思って頑張って読んだら案の定刺さりまくってしんどかった!でも先が気になって一気に読んじゃったから成長したな……頑張ってるじゃん私の脳みそ、この調子だよ!!褒めて伸ばしていこうな!!あと前作「死神の精度」の感想はこっち。
千葉ァ!!!貴様の話まだあったんかワレェ!!みたいなテンションで読み始めたんだけど、『娘を殺した相手を追う夫婦と死神の7日間』って時点でまあ……重いよね……とスッ…と居直り覚悟をして読み進めました。案の定最初から最後まで空気が重めだった。普段は人の死なないミステリーばっかり読んでるから殺人事件に弱い。でもまあその重い空気を千葉が随所随所ですっ飛ばしてくれるから楽しいんだよなあ……。KY死神千葉とのやり取りで山野辺夫妻が徐々に明るくなっていくのが目に見えて分かって良かった。それはそれとして復讐を覚悟した者としての行動がマヌケ!!!マヌケなんだけど、善性の塊っていうのがそういう抜けた部分から分かってしまうからお上手。「お前もいつかは死ぬ」
千葉が頻繁に言い切るのマジでウッとなったんだけども、まあ真理なので毎日を大事に生きていきたいですね。人は日々を摘むしか出来ない。不安症で薬飲んでる自分にこの本はちょっと劇薬だった気もするし読み終わった今でもウッってなるけど、私はこの本に出会えてよかった。なにせ私のランキングを塗り替えたからな……。伊坂幸太郎さんが一番好きな作家になったよ。「そう。誰かの記憶に溶けるから、減らない」
「先に行って、怖くない事を確かめて来るよ」
P490、もうマジでめっちゃくちゃに泣いて、恒例”感想書いてる今も泣いてる”状態なんですけど(涙腺がべらぼうに弱い)死ぬことへの恐怖がないと語る主人公がその理由について語ってるところが本当によくて。怖いけど、怖くない。私みたいにタナトフォビアの気が若干あるって人には刺激が強すぎる作品ではあるんだけど読んで欲しい本です。めーーーっちゃくちゃいいから……でもちょっと話が長いから前作の「死神の精度」から読んで……千葉ァ!!!!!貴様ァ!!!ってなるし楽しいしぐっとくるので…是非に……。
追記は強いネタバレがあるタイプの感想です。
寿命延長キャンペーンで本城の寿命伸ばされた時「マジで!?」って思ったのでお話の構成が上手いな~~~!!!ってなった。もうそれ見ちゃったら先気になりすぎて続きノンストップじゃんね……。本城に関連して、彼の掘り下げがなくてよう分からん、って感想を他所でまぁまぁ見かけました。でもサイコパスの掘り下げされてもなあ…という感じなので、私はこの塩梅でいいなと思っている派です。「ぼくは、自分の名前を相手に刻み込みたい性格なんです。『誰だっけ』と問われる事のないように、決して忘れられない印象を残したい」
この一文、なんか印象深いなと思って付箋貼ってたんですけどそれがラストのラストでイイ感じに返って来るとは思わなかった……。千葉は本城の事なんか忘れていたけど、山野辺さんの事はちゃんと名前を聞いただけで思い出したんですよね。それが凄くいい。「晩年も悪くなかった」
あの!千葉が!!千葉が!!!!あの7日間を!!悪くなかった!!と!!この〆方凄い好きだ……。私、千葉の事ディスりまくってる感じだけど、この死神仕事熱心で別に悪い奴ではないんだよな。音楽が関わるとちょっと……いや、大分変になっちゃうだけで死神の仕事を全うしている。もっと千葉の話みたいなー、短編集また出てくれないかな。
ネタバレ無しの所でも言ったけどP489~P491はもうとにかく全部だめ。全部だめ。人間という生き物が愛おしくなる。山野辺さんぶっちゃけ死ぬ事怖いんだよ滅茶苦茶。怖いの治ってなんかいないのに、「せっかく教えてくれたんだから」
って断絶状態だった父親からの最期のプレゼントを受け取りたいな、って気持ちだけで「死ぬのは怖くない」って言ってるのが心に来る。そしてこのやり取りを見た後に見る作者の後書きがまたな~~~味わい深いんだよな~~~!!!!!いやもう伊坂幸太郎さん大好きやわ……。今回、言葉の一つ一つがなんかじんわりと沁みる物が多くて、人生でずっと忘れないだろうなという出会いに感謝している。やはり本はいい。「大丈夫だからな」と言ってくれるかもしれなかった父親は突然先に行ってしまったし、己がそれを言うべき子供もまだいないけれど、誰かの記憶に溶けて消えない人生を私も歩みたい。畳む
死神の浮力
(伊坂幸太郎 )
#伊坂幸太郎
No.
24
死神の精度
テーマがテーマなので私にとって刺激物でめっちゃゆるゆる休み休み読んだ。いや~でも読み終われたって事は精神力大分マシになってきてますね!よかったよかった。
終末のフールがめちゃ良かったので多分こっちもいいだろうなって思ったら当たりだった。伊坂幸太郎さん、短編集に強いタイプの作家さんやと思う。アヒルと鴨のコインロッカーはあんまりぐっと来なくて途中で投げちゃったんだよな。
表題『死神の精度』を読んで、ははーんこれは死神が何かと理由をつけて人間の寿命を延ばしちゃうやつだな?って思ったら ぜんぜん ちが… ちがう… なんだこいつ…。なんだこいつ……。スナック感覚で人を死に至らしめる…いや死神だからな…そうだよな…。
『死神と藤田』で割と慈悲がありそうと見せかけて『恋愛で死神』で「貴様ーーッ!!貴様!!お前!!お前は人の心がないのか!」(ないです)という判定を下した事にわたくしもう怒り心頭でしたが、これが最後に効いてくるとは…夢にも…思わず……。それはそれとしてお前の仕事はどうかと思うよ。「そういうくだらないすれ違いは、人間の得意とするところじゃないか」
死神目線めちゃくちゃ腹立つんだけど「はい」としか言えないやつ。だからこそ人間関係ってのはままならなくて美しいんだよお!!!「こんなに晴れてて、犬があそこに居てさ。子供も楽しそうだし、これだけで」と一度言葉を切り、「これだけで、充分ラッキーだよね」と万歳するかのように、両手を伸ばした。
ここ大好き過ぎて初撃で泣いたし今打ち込んでる最中もうるっと来てる。こんな風に歳を重ねて死にたい。こういう感性を持ったおばあちゃんになりたい。
いやしかしまあ死神に対して「お前!お前!!そこのお前!!!」ってなる時点で物語に入れ込んでるので私の負けですね。誰と勝ち負けをせってるんだ。千葉とだよ。
大変に面白い短編集でした……終末のフールには敵わないけど、こちらもすごく面白かった…。終末のフールは読み返し回数トップ3に入ってるくらい好きだからな。1位は『インシテミル』で2位は『扉の外』です。クローズドサークル大好きマン。映画は『インシテミル』の魅力を伝えられていないので、知らない子です。
良い感じに本質的なネタバレを避けて感想を語れたのではないか…満足。短編集で読みやすいので気になった方は是非読んで欲しい。終末のフールも是非。
死神の精度
(伊坂幸太郎 )
#伊坂幸太郎
No.
23
楽園の烏
20年後の山内って書いてあるから絶対いい雰囲気で始まんないぞと思ったらやっぱりまーーーーーー、まーーーーーー、はい。はぁーーー!!いや前シリーズのラストで神が死んだってなってるからもうこの世界は無理なんじゃないかな…と(ほぼ)バッドエンドで終わってて、それでも芽吹く命はあるよ、って感じでほんのり希望を匂わせていたけれども…ども…現状希望がどこにもないが?
あとレビューで10人に1人ぐらいが「雪哉どうしちゃったの…」って嘆いてるけど雪哉ずっとこんなやつでしたけど??ってバトルしに行きたいからダメ。ずっと雪哉性格悪かったし自分と家族と仲間中心のやつだったよ!!出直してきて!!んで20年経ってその大事な物の範囲が山内全体になってるの…?分からん…お前の心の軸となってたあの人はどこにいってしまったんだよ…。
新主人公のはじめくん、これ雪哉のまろやかバージョンだな?って感じでとても好き。失うものがないから強いなあ…いや、守るべきものが全くない主人公ってどうなの?って思うのでここからなんかあるのかな…。敢えて言うならお父さんの教えとかそういうのが守るべきもの?少なくともお父さんが大事にしてた山内の事は大事にしたいって思ってるよね。でも雪哉見てるからその大事にしたいは霞んで見えるんだなあ……。芯がまだまだ見えないからこの先どうなるのか楽しみ。頭が悪くない主人公は見ていてイライラしないから良いです。
W主人公のもう一人、頼人くんは大変良いですねえ!!良い!!愉悦!!尊敬する人と世界の真実の間で揺れ動く若人の感情はほんとたまんない。――と思ってたらラストでアレなのでもしかして私の方が頼人くんの手の平の上でコロコロ転がされてました???ってなった。いやあのラストなかったら今回ちょっとパンチ足りなかったと思うので良い……いいよコロコロされちゃう…。
今作エンジンがかかるのが凄く遅くて、序盤はちょこちょこ休憩挟みつつのんびり読んだ。楽しくなるのか不安だったけど、中盤の地下街行った辺りから面白さが加速して一気に読めたので一安心。序盤の仕込み時間が長かった感じかな。でも丁寧に20年後を書いてくれたので気になる事がいっぱいで次も待ちきれない。ハードカバー嫌じゃ嫌じゃって言いつつ続きが気になるから次もハードカバーで買ってしまうな……。文庫待ってたら最短2年だもんな…。「地獄のここが楽園だ」
ぬるま湯のような楽園だと思っていた世界は、ちっとも楽園ではなかった
そして今回タイトル回収が非常に丁寧で考えさせられるなあと思うなどした。自身を取り巻く環境など人の考え方ひとつでまるで変わるからね…。あーしかしアレだな、第一部最終巻の「弥栄(いやさか)」の烏ってめっちゃ皮肉聞いてますね…。全然繁栄してないが???そして楽園ではないが??
続きから強いネタバレがあるタイプの叫びです。
奈月彦どこ行った!?!?!??!!?
雪哉の主どこ行った!?!?奈月彦だけじゃなくて浜木綿もいないし私の大好きなますほさんもいないし更には澄尾すらいないんだが……?いないんだが…?どういう事なの…なんなの…全く分かんない…作者さんがこの混乱を狙っている事だけは分かるんだけど。ますほさんとか澄尾いるとなんかちょっと安心するから長束の方出すのがまたいい塩梅だわ…。その長束様もよう分かんないとこにいるしさあ。
そして希望の種だった紫苑の君が敵対関係にあるっぽいの?どうして……なんかもうずっとどうして…って言っちゃう…ろくろ回すポーズでの「どうして…」じゃなくて顔を覆う感じでの「どうして…!」
あと雪哉が未婚のまま歳取ってるの非常に良かったです。夢女とかそういう観点からではなく、あれだけ結婚観がシビアで冷えてる雪哉が結婚してました!!ってなったら嫁さんとのなれそめや現状が気になりまくってしまって本編が頭に入ってこない可能性があった……。これはナイス判断だったと思う。いやどこかの時空列とかで本気の恋愛してる雪哉とかあったらめっちゃウェルカムなんですけど!!見たい!見たい!!!また恋愛短編が出来る程登場人物増えるかな…いやもうどうなるんだ…わかんない…。
畳む
楽園の烏 /八咫烏シリーズ
(阿部智里)
#阿部智里 #八咫烏シリーズ

