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No.
183
小説
2025年本屋大賞3位受賞作品。小説といえばここ十年近く作家買いしかしていない程度にはアンテナが鈍っていたのですが、インターネットをザッピングしていた際に「2025年始まったばっかりだけどこの本がいちばん良かった、最高」といった旨を見かけ興味を持ちました。
これがねえ、不思議なことに全く初対面の他人の言なのに引っかかったのよね。好きな読書家さんが言ってたとかじゃない、なんとなしに辿り着いたブロガーさんのひとこと。誰だったかも既に思い出せない。
とはいえ「なんか気になる」程度でホイッと2,145円を出せるほど私は豊かではなく、ひとまずAmazonのレビューを確認する事にしました。小説とか、お絵描きとか、ハンドメイドとか、あとはプロを目指す程でも無い趣味のスポーツとか、
お金にならない、高い社会的地位を得ることに繋がらないけどすきなものに、時間やお金を溶かしても誰も口出しする権利なんかないはずなのにそう行ってくれる人って親含めても周りにいないですよね。そんな人に寄り添ってくれる、お金にならない趣味を続けてもいいのか?にたいするアンサー本です。すきだからってYouTubeやインスタにアップしてお金稼ごうとか思わなくていいんだよな。
速攻で買ったよね。
いやすごいなこのレビュー!シンプルに心のど真ん中を突き、『アンサー』が知りたくなる。素晴らしい、ありがとう。あなた方のおかげで私はこの本に出会えた。宇宙を感じられた。
本の内容を一言でいえば『小説賛歌』なんだけど、その伝え方と噛み砕き方が良かったです。だってさあ、それを答えるのがあの人なんだもの。そりゃこうやって話すよね、って……。全部読み終わった時に「……だからか!」がたくさんあって気持ち良くなったと共に涙腺が緩みました。
鼻水啜りポイント、いっぱいあるんだけど特に決壊したのはここです。
「外崎には文才がある」
この一文だけでどうしようもなく辛くなってしまってベソベソに泣いてしまった、近年まれに見る降水量でした。小学生からの親友ふたりが遠からず断絶される事は分かっていたんだけど、その通告がハッキリとなされて瞬間の内海の心情を慮ってしまって感情が溢れた。いやーもうこれは物作りをしている全ての人間に刺さるよ……泣くでしょこれは……。悔しいとか寂しいとか憧れとかぜーんぶないまぜ。無理。
──って思って、読んだ瞬間にこの気持ちだけメモに記してたんですけどね、いやもうこれは、なんかもう、嘘じゃん?内海すごくない?支えてんじゃん外崎を。お前が繰り出す不穏モノローグは一体なんなんだよ、ずっと献身的に支えてるよ!!出来た人間だよお前は!!!
読んでしばらくの間は「騙された!」って思いながら外崎が真っ赤な絨毯を歩くまでの苦労話を半ば白けた気持ちで見ていましたが(だって絶対受賞するやん)、その後まさかああなるとは思わず………。そこから手を休める事なく一気に読んでしまいました。
宇宙の始まりとか所有物の話とか刑事さんの話とかどう繋がるんだろうなって訝しんでいたのだけど、こうも綺麗に繋がるとはなあ……。急なジャンル方向転換に若干面食らったところもあるんだけど、丘(と聖地)の話は最初からされていたしすぐに受け取る事が出来ました。
なによりね、美しいと思うの。光と音を飛び越えるのに理屈なんていらないのよ。必要なのは心で、それが完璧なまでに、あった。それだけのこと。それにこれは『小説』だから。「読むだけじゃ駄目なのか」
この解を出すために生きてきた時間、ずっと楽しかっただろうなと思う。人生を賭けたラブレターを渡すためだけの生。内海より先に外崎が収束しただけの話でもあるんだろうなあ、このエントロピーの果てできっとまた会えるって思っちゃうもの。いや、外の『嘘』を内に入れるからもうずっと一緒なのか、そうか。
途中から思ってたけど、最後まで読むと内海と外崎って名前にもしみじみしてしまうな……。全部が対比になっている。「小説は心を合わせるもので……心は時間で変わるから……つまり、時機があるんだ」
読み終わってからはヒゲ先生のこの言葉の意味がまるっと変わるというか、十全理解出来るのがニクイよほんと。頭の中にパーッと快楽物質が分泌されるような感じ。慰めじゃなかった。ただの真実だった。それになによりさあ、いつも言ってた事が更に色づくのが良いよね……。「読んだ?」
あかへん、読み返してたらいちいち泣く気がする。ただの4文字、ただの4文字なのに大事なものが全部詰まってるんよ。この一言が、ただただ愛おしい。
最後一行に全てを込めて。このアオリに偽りなし、最高の宇宙でした。
小説
(野崎 まど)
#野崎まど
No.
180
亡霊の烏
逐次想いを吐き出さずに最後まで読んだ上でこの感想を書いています。
いまだかつてないほどに「!」多めです。自分でもビックリするくらいずっと叫んでいる……。
やめてくれ~~~
なんでこんなことに~~~
ほんとに~~~~~!!
ナンデ……ナンデ………。
帯のうたい文句である「いつか報いを受けるぞ博陸候」の報いの形が雪哉にとってのピンポイントになり過ぎている。いっそ怒り散らして乱心してしまえば良かったのに、そうじゃないのが「あぁ、雪哉だ……」って……。お前は全部をうちに秘め過ぎてるんだよ~~~もーーーさーーー……。
ラストが衝撃的過ぎたので途中の話があんまり出てこないまであります。それに実は、【楽園の烏】と一緒で半分通過するまでエンジンかからなくて……!トビくんが知らない子だったからあんまり……というのと、雪斎と紫苑の宮どちらも肩入れ出来なくて感情移入しない状態で読んでいたからだと思います。
その上で私がいちばん「がんばれー!」ってなっていたのは凪彦です。綺麗事しか今は言えなくても、お飾りの金烏代から脱して自分の手で何かを掴んで欲しかった。
…………欲しかったんだよォ……!!!
蛍とのいちゃいちゃシーン本当に可愛かった……。凪彦目線も蛍目線も相手への想いが溢れてて甘かった……!だからこそ、だからこそお互いが弱点になるのだ……。ああなってしまってはもう凪彦はダメだよねぇ……。
それにしたってさー、味方になったあせびの使えなさヤバない?
あっ、ごめんなさいね言葉が一回りキツくて。敵だとあんなにも根回し上手で思い切ったことをするのに、内に入った途端に弱体化するのなんなの???やっぱりアレか、大紫の前が彼女のゴールか。まあそれはそうだよね……。八咫烏一族における女性の最高権力者、これ以上は望まない女だろう。最後の最後に脚を引っ張ってくるのはやめてくれと願うばかりよ……。
味方と言えば、【烏の緑羽】を経てから見る長束さまは頼もしさが違いますなあ!いやまあ実際は何も出来なかったんだけど、それでも。雪斎との舌戦に遅れをとっていない様が素敵でした。お互いに色々分かってるもんなあこの2人は……。なぜ分かり合えぬ……。見ている方向は一緒なれど、道が交わる事は決してない。
【望月の烏】感想より
過去にこう感想を落としたんだけど、これ全然違いますよねよく考えると。
マクロな視点を持って事にあたっているのは雪斎。これは真の金烏である奈月彦の意思を継いでいるものだと思う。山内の滅びを回避するのが雪斎の目的。
一方でミクロな視点及び「八咫烏」という個を優先して「今」を変えようとしているのが紫苑の宮陣営。今が暗けりゃ未来も暗くうつるのはそれはそう。
なんかもう、どっちもどっち感が若干あって、ほんとに、もう……!やー……でも割と雪哉に肩入れしてるところはあるけど、私。でも長束さまの気持ちも紫苑の宮の気持ちも分かるから………。
一番分からないのが「全て皇后の思う通りに」の奈月彦だよ!!!!!!!なんなのこの遺言!!!!ぜんぶここからはじまった。愛は烏を盲目にさせるのか……?
梓さんが雪哉の事をしっかりと理解してくれているのが救いでした。悪い事はしているけれど、未来のためであると。でもそんな彼女はいなくなってしまって、雪哉に深く根付いているアレがココになってまた花開くという……最悪もサイアクすぎる。「産ませるべきではなかった」
「俺もそう思います」
雪斎じゃなくて雪哉を見たいとは言うた!言うたけどさー!こういう形で雪哉少年を思い出したくはなかったよ…………。
澄生がついぞ紫苑の宮として表舞台に出たわけですが、これってもう戦争じゃないですか。見とうない。「楽しくなってきたぜ……!」って全然これっぽっちも思えない!
雪斎が血で血を洗うならばこちらも、という覚悟を完了してしまったのが辛いです。話し合いの席は前回で決裂したもんね……。
ああーーーー今まで自分が言ってきた願いが到底叶うものではないと突きつけられている……!「栄えなくてもいい、穏やかな未来がありますように。」
【烏の緑羽】感想より
無理だよー!!!!!
それに私はこうも言ってる!!!「山内、滅びた方がよくない???」
【烏百花 白百合の章】感想より
神が不在の荘園なんてそもそも無理なんだよたぶん!【玉依姫】で全部終わってたんだよ!!
…………だからこその奈月彦のあの言葉なの……?滅ぶまでの束の間で夢を見る。全てが見える金烏だからこその諦め……?おあー。
どうなる八咫烏……どうなる山内………。次を……はよう次!
あと再読するする詐欺をしていたんですが、いいに加減に読み直して自分のスタンスをハッキリさせます。とりあえず追憶を読むぞ。どっちつかずのコウモリ野郎をしてこの先に進むのは気持ち良くない、私は東家ではない(自身の気質が明らかに東家であることをひどく気にしています)。
読んだ結果、どういう立場でものを言っているのか後日追記しますね。
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亡霊の烏 /八咫烏シリーズ
(阿部智里)
#阿部智里 #八咫烏シリーズ
No.
179
冬期限定ボンボンショコラ事件
小山内さんが私好みの女子過ぎて困るんだが~!?
初手からこれを叫ばずにはいられない程によかった……よかったです………。大大大満足です。ちゃんと時系列に則って話すね……すぐさま言いたいんだけど……。
アニメ化してる作品だから感想を隠します。念のため。
読み始めは中学生の頃の事件と現在の事件が全くつながらなかったんだけど、『事件に巻き込まれいるはずの正体不明中1女子(実は中3)』が出てきた時点で「小佐内さんだーーー!!」ってなって気持ちよかった。第一気持ちいいポイント。
ふたつの時系列を行き来するのって読むのに集中が途切れることが多いです。頭を使うので。でも今回は事件があまりにも共通している事と含め、今までごまかされ続けていた互恵関係の始まりが知れる機会だったのでトコロテンのようにツルっと読めて常時面白かったです。まあ現在軸の話はそんなに量もなかったしね。毎日定時の繰り返しにイレギュラーをひと匙、というのが読みやすさに寄与していたと思う。
私はこのシリーズが『死者が出ないミステリー』である事が好きでした。でも今回はそれが叶わない予感がして、水面から鼻だけ出して呼吸をしているかのような息苦しさがありました。いつものねっとりとした謎じゃない、命の危機を伴った謎。
でもまあ、だからこそ1日で読破するほど夢中になったわけですが。気になるよ先がー!過去軸の事件の解明と現在軸の事件の謎及び小佐内さんのメッセージ。全部が小刻みに心地よく情報が増えていくのが楽しかったです。特に小佐内さんのメッセージね、意味深で良い。
トリック関係はハナから解こうとしていないので言及は割愛。私は合いの手を打つ係に徹するわよ!
でも過去軸コンビニカメラの件は神社でちゃんと気付いたので、中学生の二人はまだ甘かったんだなぁとちょっとニコリと。だけど日坂くんの人間関係はさすがに分かんなかったなあ。普通に彼女だと思っていた……痴情のもつれを危惧しての口止めかと……。だから大人が出て来た時ほんとうにビックリした。「そんなにデカイヤマなの!?」って。
小鳩くんの感情の鈍感さ、というか人の感情の機微を全く考慮しないさまって、大昔に大失敗を起こしたがゆえに蓋をされていた感じだったのかな、と。中学でアレだけのことがあったのに、高校生活の3年間で全然進捗が伸びていないというか。そもそもとして小山内と一緒に帰っていた小鳩くんは「笑ってた」のに、自分自身はそれに気付いてなかったってのが鈍すぎる。喜怒哀楽の『喜』の感情が謎解きでしか発揮しないと自分で思ってるタイプか貴様。
で、今までのその鈍さがあったからこその日坂くんとの邂逅が沁みたなあって。好意を受け取ってもらえなかったことが悲しかった。
この素直な気持ちを小鳩くん自身が気付いたことに感極まってぽろぽろ泣いてしまった。顧みれて良かった、伝えることが出来て良かった、って。若者の成長に私は弱い。
メインディッシュです。この二人の間に恋愛感情があるかは重要ではない。
それはいま置いておこう。
でもね、私はね、
明確な言葉にしないままに「I need you」を伝えるシチュエーションが大好物なんだよ……!「おいしいお店も探しておく。だからきっと、私を探してね。そうしたら……最後の一粒をあげるから」
「おやすみ小鳩くん。わたしの次善。」
小佐内ゆき!!やりおる!!!大好き!!!うわーーーもうーーーー甘酸っぱい……!さながらいちごタルト……!!ご馳走様です……!!あーーーー「わたしの次善」……おぎゃ……。すいませんちょっと良すぎて言葉が出てこないんですわ……。ああー………。すごい、しみじみ噛みしめちゃう。
大学生になった彼らを見たいなんて贅沢は言わない。ここでピリオドを打つからこそ美しい。小市民シリーズ、まるごと全部美味しくて楽しかったです!
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冬期限定ボンボンショコラ事件
(米澤穂信)
#小市民シリーズ #米澤穂信
No.
157
望月の烏
『名前を言ってはいけないあの人』が存在するので、アニメ勢に配慮して本文を隠します。
あせびこわ。「皆さん、わたくしの息子のためにこうしてお集まり下さり、本当にどうもありがとう。どういう結果になろうとも、わたくしは皆さんのことを我が娘のように想っております」
背中がゾワゾワする~~!砕けた敬語を使って親しみを覚えさせるやつだよコレ~~~~!!ただひたすらに、あせびの事が怖い。『信用出来ない語り手』って、こちら側(読み手)に深い傷を残しますね……。あせびの何もかもが信用出来ないので、彼女が口を開くたびに「こ、この女……!」という感情が湧き上がっていました。今作中に馬脚を現す事が無かったのは残念なような、今後が楽しみなような!『大紫の前』が彼女のゴールなんだろうか……。今後も登場するたびに「あせび~~~!!」って叫びそうです。いやぁ良いキャラクターだな彼女。好きだわ。
【望月の烏】は、【烏に単は似合わない】と【烏は主を選ばない】を良い感じに合体させた作品になっていて、どこか懐かしさを覚えながら読み進めました。2日で読んじゃったよね楽しすぎて……。連日夜更かしをしてしまった。
とはいえ妃選びは形だけのもので結果が決まった出来レース。誰を選ぶのか、というワクワク感や女同士の熾烈なバトルはない。前回とはまるで違う様子が、逆に興味を惹かれました。貴族の結婚なんて今も昔も『政治』である事には変わりなく、それでも自由度が多少あったのが前回。対して今回はあまりにも酷い。姫たちもそれを知っているがゆえ、生気が感じられないのが可哀想でした。……ただ一人を除いては。
鶴が音の頭でっかち委員長っぽさがすごーい!!!
その、異性に相手にされてはしゃいでるのが『年相応』でことさらに浮きますね……。ほんとなんかゴメンなんだけど、他人との血でこういう事言うのアレなんだけど、雪哉が大事にしてる北家からこういう子が来るのがなんか、なんかーーー!「自我が強い」という言葉が似合う子だ。
七夕の節句で、山吹が鶴が音を非難したシーンはスカっとしました。暴走特急を諌めるには羞恥心を与えるしかないからな……。いわゆる『スカッとジャパン』みたいなシナリオにカタルシスを覚えると癖になるので嫌なんですが、やっぱり「思うところがある」相手がこうやって成敗(?)されるのは気持ちが良くなっちゃいますね。今回の登殿の儀、共通の敵をひとり作って残りが団結する図式になってるのがねちっこくて眉間にシワが寄ってしまうんですが、そうすると表立ってのトラブルは抑えられるから悲しいものです。女の集団を上手く運用するのに理に適っている。
そして私、明留が死んだ事を記憶の彼方にぶっ飛ばしてました。ああーーーそうだったーーー……そうだよ……。明留がいたら雪哉は今のあの感じじゃないよ……。シゲさん………明留……。
雪斎は雪斎であって、もう雪哉ではないんだろうなぁ。終章に居ただけだもんね、雪哉。けれども、「私があの子を見間違うはずがない」
の言葉に、もう、ほんとに、……ああ!あーーー!スッと言葉が出てこないよ。しんどいなぁ。はじめて澄生を見た時にどう思ったんだろうか。ここからまた【追憶の烏】を読むとまた違う味わいが楽しめそうです。
他作品の話を引き合いに出すのですが、雪斎の必要悪ムーブがどことなく『ゼロ レイクイエム』を思い出させるので、それに似た形で物語が幕引きされる事がないように祈っています。「死んで欲しくない」というよりは「私の予想を上回る物語を出して欲しい」という欲です。
カバー裏の概要を読んだ際、金烏代が美女にうつつを抜かして儀式が荒れる……といった話になるのかと思っていました。だから凪彦の第一印象は良くなかったんですが、それはもういい子で!!超ビックリよ!!両親がアレでソレなのによくもまぁ……ここまで純朴な子に……。やはり血よりも環境なのか。「ああ、すまない。そなたの忠心は宗家ではなく、兄上へのものであったか」
これをサラッと言えるの本当に凄いと思う。おもわず一瞬呆けてしまった。凪彦の事が一気に好きになったし、この子が語る言葉を信じようって思えました。なんというか、分かりやすく『主人公』ですよね、彼。澄生こと紫苑の宮を主人公にすると「強い」がゆえに読んでいて疲れる事になりそうです。凪彦は「弱い」がゆえに応援したくなるし、今後伸びしろしかない。次も彼目線の話が読みたいなぁと思いました。
もろもろの事件が形的に終息"させられた"時に雪斎の部屋に殴り込みに行くのが格好良かった!漢を見せたね……!そして操り人形の木偶に話しかける雪斎の、なんて冷たいことか。いやこれが雪哉だって分かってるんですけど……。雪哉こういうヤツですけど……。
そして「ここからもう打つ手はないのか」と打ちひしがれていた時に蛍からのアプローチですよ!!!
いやーホント気持ち良かった!びっくりした!!まさかそこに伏兵が潜んでいようとは!だって今回で登殿した姫たちに強い自我を感じていなかったもの。あ、鶴が音さんはちょっと強すぎるんで抑えてもろて良い?……いやこれ、鶴が音の強さがいい隠れ蓑になってるんだな……やるじゃん……君は雪斎派閥だけども。
話を戻して。まさか姫を起点に新たな希望のバトンが繋がるとは思っていませんでした。この作品の女子たちって御家の事で手一杯で、マクロな視点がとれていない子が多いように思います。仕方ないよね、戦国時代の姫みたいなもんだもん。女は添え物、政治の道具。だから四姫の中から謀反に似た事をする女子が出るのにビックリ仰天で!やるじゃん!!「やれる事をやろう」という小さくとも大きな決意。その芽が育つ事を祈っています。
さて。台風の目、こと澄生ですが。
紫苑の宮って気付いてませんでした!!!!!!
私は素直なので!!ますほさんちの長女ならまあこれくらい……なるかな……?と思っていました!!外界の知識が濃すぎるのはちょっと引っかかったけども。そもそもとして最初から答えが出てたのよね。「奈月彦にそっくり」って。いやますほさんの長女なら……ね…………イトコだし…ね!
短編・烏百花の【きんかんをにる】で奈月彦が感じていた「政治は自分よりも得意」であるという予想。あれはこの展開のための匂わせだったのか、と……。立ち回りという広義の『政治』ね。人心掌握を心得ている。
話は少しそれますが、短編の回収として腑に落ちた事があります。今作を読んで【あきのあやぎぬ】に対してモニャモニャ~っとしていた気持ちに納得がいきました。『山内』に対して博陸候 雪斎がやっている事を『家』という単位に縮小して書いたのがあの小話だったんだなあ。
寵愛対象であるうちは幸せである──。まさに、と。いやぁ、短編を読んで感想を残し、そのままの熱量で【望月の烏】に挑んで良かった。超良かった。とても楽しい。
話を紫苑の宮に戻して。彼女が言っている事ってまさに『理想論』なのだけども、耳を傾けたくなるカリスマ性があるなぁと感じます。前しか見ていないからかな。それにいいじゃない、青くて。若者が謳ってこそよ。それと行動の節々で雪哉に対する甘えを感じさせるのが好きです。
雪さんなら分かっているはずだし、やれるはずなのに何故そうしないのか。
そういった感情を二人の討論から感じました。可愛いじゃないの。
見ている方向は一緒なれど、道が交わる事は決してない。ここでもう、明確に別れてしまった。けれど、『雪哉』と『紫苑の宮』として二人が言葉を交わす日を夢見てしまいます。
次回は凪彦メインで長束さま登場でしょうか。
【烏の緑羽】の印象はまだ残っているんですが【楽園の烏】【追憶の烏】の記憶が薄れてきたので、ここで一度復習をしておきたいところですな。……買うか、文庫サイズも!!
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望月の烏 /八咫烏シリーズ
(阿部智里)
#阿部智里 #八咫烏シリーズ
No.
154
烏百花 白百合の章
アニメが始まったので、しばらくの間は配慮して隠します!
大切な人の大切なモノを背負い込んで変わってゆく雪哉を他人の視点から見ると、また……!こう……!奈月彦の分だけ抱えていたと思ったら、茂さんの分も抱えていたのか。
それにしても雪哉少年は二面性男子のお手本みたいな子ですね。他者に自分がどう映るかをコントロールするのが上手い。理知的に「見せたい自分の使い分け」をしているので、より一層腹黒さが際立つというか。表でニコニコしてて腹に一物抱えてる、とは方向性が違う腹黒だと思う。狡猾さを隠してポンコツに見せてる根本の理由が「大切な人のため」だから好きだ。
【ふゆのこそら】で市柳にガン詰めしてる雪哉少年は色んな意味で「丸出し」な感じがすごく美味しいですね……。【追憶の烏】の後に読んだから、なおさらに。
昔っから明留を「いい子だな」と思っていましたが、ここまで来るとチョロすぎて心配だな!?まあ殴り合いをして絆を深めるのは男の子らしくていいけどさ……。シンの印象を180度変える速度が早すぎるよキミィ!
そして久々に摂取するますほさんにしんみりするなどしました。正室選びから一皮も二皮も剥けた彼女はやっぱりいい女だなって。こんなお姉ちゃんがいたら弟もそりゃいい子よ。西家の若人、新しきカップルの二人に幸あれ。正統派の恋バナ浴びれてほこほこしました。
【あきのあやぎぬ】の読み心地、好きかも。よく分からないものがじっとり口元にさわさわする感覚があって面白いなあ。何も分からない場所に放り込まれたのが【烏に単は似合わない】を彷彿とさせるのもお気に入りポイント。
「よく分からない何か」は結局のところ色んな人からの・色んなかたちの愛だったわけだけれど、始まりと終わりだけ見るといささかホラーテイストに感じました。その口当たりがすごい好きです。
いや、良い場所なんだよ。良い場所だともさ。そして顕彦はとても優しくて良い人だ。それは疑いようもない!でもなんか、こう、「ハッピーエンドやん!」と一口に言えない風味があるというか。
『囲われている事』自体は言葉通りで、おそらくそこにうっすらと不安を覚えているんだと思う。顕彦も楓さまも側室の面々も裏がなく優しい人たちなんだよ。それは良かったけど、良くはないんだ、きっと。側室のみんなみたいな人が出ないための仕組みが山内には必要だと思う。そういうところにモヤモヤするのかな~!このもんにょり感が好きな話だなあ。
一方で鬼火灯篭のお話はまごうことなき「光属性」の話でこちらも好きです。選定時の灯籠の表現が実に美しい!文章から鮮やかな色彩と光が伝わってきて、胸が高鳴りました。現実×ファンタジーの小道具って妙にワクワクする。
出てくる人たちも全員トゲや泥がない感じで良かったな。お互いに尊敬しあって「負けませんよ」と言える間柄って素敵だ。
親世代の昔話、パンチが強い。こちらからは以上です。
…………ストロングなのよ後味が!!!飲み込むのにちょっと時間が掛かるというか……。全部の小話に感想を挟む必要はないから黙っとこうかな感もありつつ……。すごい……なんかこう…… 山内、一回破壊した方が良くないですか??ってなりますね。いや現在軸では壊れかけているんだけども。さもありなんというかな。はかりごとで人が死にすぎている。
浮雲のお話は「美しい悲恋」という風に捉えて読んでいたんですが、最後でああ来るとは思ってもいませんでした。……これは天女さまですわ。そしてまさしく『あせびの母』。
【きんかんをにる】を読んで、「なんで!どうして!現在軸であんなのになっちゃったの!」という気持ちで頭がぐしゃぐしゃになりました。紫苑の宮と雪哉の仲睦まじさよ………。アレですよね、雪哉って姫宮の『初恋のお兄ちゃん』ポジションですよね……?すーぐ恋愛感情に結びつけるのは私の悪い癖ですが、淡い初恋はピュアなものだと思ってるので!………いや、ピュアなように見せかけたピュアじゃない初恋のデュエットがあったな……。淡い初恋がピュアなんじゃなくて、幼子の好意がピュアって事でここはひとつ。
話を戻して。奈月彦たちが願っていた穏やかな祈りと願いが分断されてしまった事が本当に辛い。ただただ悲しい。外野が全部悪かったのか、と言われればそれも疑問なのだけども。『金烏』から、ただの『奈月彦』になった事で雪哉とのすれ違いが発生してしまったのかな、と私は思っているんですが、ただそれだけじゃ現在の形では拗れてない気もして。紫苑の宮と完全対立してるじゃんね……。空白の間に何があったんだろうか。
今から【望月の烏】を読むんですが、不安と期待がないまぜ状態です。【烏の緑羽】の時は無邪気に「新刊やっぴー!」って思ってたのにな……。短編で過去編を読む事になり、各人の解像度がまた上がった事で「なんとか……なんとか幸せになってくれ…!」の気持ちと「山内、滅びた方がよくない???」の気持ちが平行になっている。そもそも誰目線でどの時間軸なんだ……!買うだけ買って何も把握していないぞ。いやぁ楽しみだ。
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烏百花 白百合の章 /八咫烏シリーズ
(阿部智里)
#阿部智里 #八咫烏シリーズ
No.
112
かがみの孤城
辻村深月先生の作品に触れるのは実に10年以上振りです。『冷たい校舎の時は止まる』が最後。今作『かがみの孤城』も『冷たい校舎-』に似た構造のお話で、なんだか懐かしい気持ちになったりしました。閉鎖的な環境に少年少女を閉じ込める話だいすき。似たようなストーリーラインだと『扉の外』が一押しです。特に2巻。嫉妬!恋愛感情の利用!青い感情の宝庫じゃぁ……。
辻村先生、いじめ未満の描写上手すぎない????いや、"未満"と表現したものの明確ないじめなのよ。それはそう。そうなんだけど "子供の浅知恵" "子供同士のトラブル" で片づけられそうな、"ありそう" な感じがたまらなく不愉快。薄い膜を貼ったような気持ち悪さっていうのかな……。だからこそ、こころが苦しんでいる様子が切に伝わって来るので、現実の話は読んでいて辛いところが多かったです。こんなん不登校になって当たり前なんだけど、親には説明出来ないよね……。
いじめの話ではないけど "共通の敵がいると早く仲良くなれる" っていうのがまたね!群れでよくあるアレよね!ってなりました。集団になった時の人間の動きがリアルなんよ。人間のあんまりよくない部分を表現するのもお上手すぎる。ともあれ、そういう汚い部分が登場人物みんなにそれぞれあって、だからこそ感情移入もしやすかったです。なんだろ「こういう子、いたよね」って感じ。でもみんな良い子で、素直に行く末を見守りたい気持ちになれました。
最初の方であまり好感を持っていなかった唯一のキャラがウレシノです。恋愛脳のキャラは基本嫌いじゃないんですが、ここまで……ここまでされるとちょっと……!そんな彼が、城でのやり取りを経て成長していくのが青春劇の王道で良かった。皆それぞれに現実を見ていくんだけど、精神的な成長が一番あったのってウレシノじゃないかな。マサムネたちが来ても、来なくても。
おにぎりがおいしくて、冬の空がきれいで鳥が見られて。
とても幸せないい日だと、ウレシノは思っていた。待ちぼうけになっても、明日、城でこのことをみんなに話そう、とウレシノが思う。
スッと視界が開けた爽やかさが溢れていて好きなシーンです。今作で一番好きなところ。映画のPVでもこの場面が採用されていて、分かってるじゃんと膝を打ちました。いいよね……分かってるじゃん……。
あっ、PVにまつわる愚痴を1個言っても宜しい!?!?言うわね!TwitterのショートPVで、こころとリオンのラブコメが主題かのように仕立てているの、めちゃくちゃ気に食わないです!!意図は分かる、意図は分かるのよ。『君の名は』みたいな空気感で客を寄せようと思ってるんでしょ?分かるんだけど!ありもしない餌で釣ろうとするの、ガッカリして作品の事嫌いになるから良くないと思う!……以上、初見で「ハァ!?」ってなってずっと心に溜めていた文句でした。
話のギミックというか仕掛けに関して。難しい事は全く無く、本を読んでいるオタクはすぐに気が付くやつです。だから 、"衝撃の事実!" とか "最後の大どんでん返し" に期待して読む作品ではない。「こうなんだろうな」と思っている事に関して、答え合わせをしていく感じ。その辺りに関してはいささか退屈に感じる部分もあったんですが、彼・彼女らの生末が気になって物語を読み進めていたのでページをめくる手は止まりませんでした。キャラの事が好きになっちゃったら気になるじゃんね、選んだ未来。
夜を越え、目を覚ました時に世界が変わっていたら、と願ってもそんなものは叶わない。…ハズだったのが、その鍵を手に入れた子供たち。誰が何を叶えるのか、その先に何が待っているのか。ハラハラ、ドキドキしながら見守るのが楽しい作品でした。
かがみの孤城
(辻村深月)
#辻村深月
No.
88
烏の緑羽
「分かるけど分からねェ……!」が解消されるかと思ったら、フォーカスされた先が長束さまだったので色んな事が分からないままっていう~~~~!【楽園の烏】の感想でも言及したのですが、今回も読書エンジンがかかるのが遅くて前半は休み休み読んでいました。しかし中盤になってからは何もかもが気になってきて、就寝時間を1時間半もオーバーした形で一気に読了してしまい。八咫烏シリーズ、最初のパンチが本当に弱いんだけど、前半の出来事が遅効性の毒みたいに一気に巡り始めるから凄いなあと思います。いやだってこのタイミングで路近の話聞きたい人とかいる!?!?おらんやろ!!けれど、長束さまと路近周辺を掘り下げる事によって、山内の裏の部分とかの世界観がこれでもかと感じる事が出来たので、必要な内容だったなぁと考え直しました。というか、雪哉一人に肩入れせずに済む。
【烏の緑羽】は長束さまのオムツがいかにしてとれたか、というのをメインテーマにしているようで全然そうじゃなくて、山内のいびつさを改めて叩きつけたかった+サブの登場人物について掘り下げる事で、雪哉と対立している面々への共感力を上げたかったのかなって。そもそもとしてタイトルが……だし!【追憶の烏】で雪哉の心境だけ知っている状態で、いかにして【楽園の烏】に至ったかが描かれたら、大多数の読者が雪哉の選択が正しいと思ってしまっていたと思います。前作主人公だしね。長束さまと緑寛が掘り下げられた事によって、ああいう環境で育ってきて、その上での信条があるから雪哉と対立したんだな、という納得力が上がったというか。ネット上の争いごとでもそうですが、片方の事情だけしか知らないとかフェアではありませんからね……。両者の下地をしっかりと読み込めた事で、これから先に何が起きたとしても片方に過剰に肩入れせずに済むのは助かります。とくにわたし、めちゃくちゃ感情で物を言うので!分からないものは怖いの精神なので!「お前――このためか」
その顔を見た瞬間、これまでどうしても分からなかったことが、ようやく分かった。
「このために、私に仕えてきたのだな」
―第六章 翠寛
ここからの流れ、パズルのピースがカチッとはまって脳汁がぶわーーーっっと出る感じが堪らなくて大好きです。しびれた。
緑羽視点で路近の過去を追ったものの、追えば追うほど意味が分からない存在で霧は濃くなっていくばかりで。早い話がサイコパスですよね彼……。精神疾患をバシッと決め打ちしていうの、物語上の登場人物とはいえちょっと憚られるな~~!路近自身が望んでそうなったのではなくて、生まれ持った気質だからなおのこと。
それはさておき。理由が理解出来たからといって、それを心で咀嚼出来るかどうかは別だな、と路近を見て感じました。先のように”納得力”という言葉を私はよく使いますが、彼の事は分かったけれどその心の在り方に納得は出来ないというか。霧は晴れども、そこには沼が広がっていてこれ以上は追えなかった。そんな感じです。これを側における長束さまは凄い人だよ……すごいよ……。奈月彦を全肯定するだけの人だと思っていたら、今巻で一気に深みが増したなあ。なんせ私、雪哉の主どこ行った!?!?奈月彦だけじゃなくて浜木綿もいないし私の大好きなますほさんもいないし更には澄尾すらいないんだが……?いないんだが…?どういう事なの…なんなの…全く分かんない…作者さんがこの混乱を狙っている事だけは分かるんだけど。ますほさんとか澄尾いるとなんかちょっと安心するから長束の方出すのがまたいい塩梅だわ…。その長束様もよう分かんないとこにいるしさあ。
って【楽園の烏】の感想で言うてるから!!長束さま出てきても全然安心感ないって半ばディスってるから!!ごめんね!!しかし公式でバブちゃん判定が出た事により、この時感じた私の長束さま評は間違ってなかったんだな、って。
次巻はようやく浜木綿さん視点が来るのでしょうか。正義の反対は悪ではなく別の正義、というのを痛い程描いている第二部。登場人物の行く末というミクロ視点も気になりますが、八咫烏の未来というマクロ視点でも続きが気になっています。栄えなくてもいい、穏やかな未来がありますように。
烏の緑羽 /八咫烏シリーズ
(阿部智里)
#阿部智里 #八咫烏シリーズ
No.
87
追憶の烏
前作までの間に何があったのか分かるけど分からねェ……!そんな感じです。加えて衝撃のラストに全部気持ちを持っていかれたので、間の出来事への印象が割とすっぱ抜けている。あのラストに驚かない人はいないでしょう……露ほども思い浮かばない再登場だったよ……!
若宮の心変わりというか、件の遺言に雪哉の思いと同じく一瞬だけ「なんで!?」と思ったのだけど、すぐ腑に落ちた、のち感傷的な気持ちになった。家族を得た事で、『金烏』から『ただの奈月彦』になったんだなあと。……いやもしかしたら山内を考えての事かもしれないけれど!今のところ私はこう考えています。だから、金烏に仕えていた雪哉が浜木綿さんと袂を分かつのは至極真っ当な事で。ただ、理解は出来るが感情が追い付かない……!分かるけど分からねェ!紫苑の宮は何を思っているんだい!憎悪の英才教育を受けたのか!?
改革には痛みを伴うもの。現実の歴史でも存分に語られていますが、その痛みは先の合戦で既に終わっていると思っていました。猿や神といった”外敵”と一致団結して戦う事によって、分裂の危機を乗り越えたと勝手に感じていた。しかしまーーーーーそんなはずはないのよねえ!!敵がいなくなったら新しく敵を作るだけ……というサイクル、日常生活でも心当たりがありすぎてしまう。奈月彦、いかんせん有能な身内に甘くて一度でも敵/無能と認定した者にめちゃんこキツイな、と思っていましたが、きっと同じ事を色んな所で色んな人が思っていたんでしょうね。だって私【烏に単は似合わない】の奈月彦めちゃくちゃ嫌いだもん。なんやねんコイツ!って感じでした。彼の少し深い所に入らないと、彼の気持ちは全然全くサッパリ分からない。そして分からない存在は、こわい。大人たちと女の憎悪が上手い事噛み合って奈月彦の暗殺が成功してしまったわけですが、その背景には割と納得の気持ちでいます。繰り返すけど最初奈月彦嫌いやってん!!その感情を思い出すだけで、四家の方々の気持ちと彼女の気持ちがちょっと分かるのよ……。しかし納得はしているけれど、だからといって死んでもいい訳ではない。奈月彦に限らず誰でもそう。そこの辺り、胸がモヤモヤします。これも『追憶の烏』における「分かるけど分からねェ……!」の要素だなあ……。
【楽園の烏】に至る雪哉の行動は全部納得しかなかったのだけど、奈月彦の気持ちだけは推察するしか出来なくて本当の所が凄く気になる。語られる日が来るのだろうか。語られたら、私の心は誰に傾くのだろうか。
それにしても雪哉、ずーーーーーーっと行動がブレない。家族が大事だから山内が大事。その山内を大事に想っている金烏である奈月彦が大事。いや、奈月彦個人の事もきっと大切に思っていたと思う。ただそれ以上に、金烏としての彼に焦がれていただけで。心の中に柱がキチッとあるキャラは、一見意外とも思える行動をしてもちゃんと理由が分かるから良いですね。
っていうかあせび~~~~~~!!
あせび!!お前!!!退場したはずでは!!すごいなあこの女!!!自分が成り上がるために何もかもを道具にする系の女!!すごい!!
あせびの凄い所は、機が熟すまでの種まきをせっせとして怠らない所です。【烏に単は似合わない】でも仕込みを存分に行っている事は描写されていました。その下地がある故に、最高のタイミングで最悪の花を咲かせられるように潜伏していたんだな……と急な再登場に納得するしかない。すごい女だよ……お前人狼ゲーム得意だろ……感情で吊り逃れ出来るタイプの狼だよ……いっそ見習いたいぜ……。
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追憶の烏 /八咫烏シリーズ
(阿部智里)
#阿部智里 #八咫烏シリーズ
No.
86
逆ソクラテス
最後の話ぼろくそに泣いてしまってダメ~~~~~~~。
小学生たちが理不尽を強いてくる大人や価値観に立ち向かう連作。主人公が子供なので、いささか感情移入がし辛いのと他力本願の「スカッとJA〇AN」系な展開がいくつかあり、not for me 寄りの作品になるかと思いながら読み進めていました。でも最初から所々でキチンと胸を刺してくるんですよね……大人になってからのほろ苦さとか、矯正のし難さとか。「そうだよ、永遠。
バスケの最後の一分が永遠なんだから、俺たちの人生の残りは、あんたのだって、余裕で、永遠だよ」
―アンスポーツマンライク
最初の丁寧な仕込みがのちに爆発するタイプの話だったな……って『アンスポーツマンライク』を読んで感じ、そこからの『逆ワシントン』のラストで涙腺ガバガバのハイドロポンプよ。幼いころの失敗は大人になっても引きずる、っていうのをちゃんと描写した上でのチャレンジしようぜ、リトライしようぜ、というメッセージにとても励まされる。あと、他人に優しくするのは自分のため、って価値観も好きです。優しさの連鎖が返ってきて欲しいわけじゃなくて、何をしてくるか分からない他人が怖い、って事から発した言葉なので猶更実感がこもっているというか。
頑張りが必ずしも報われるなんて、都合がいいお話ではあるのだけれど。紙の上でくらい、全員がハッピーでもいいんじゃないでしょうか。
逆ソクラテス
(伊坂幸太郎 )
#伊坂幸太郎
No.
85
アイネクライネナハトムジーク
恋愛が主題の連作。現代が舞台の恋愛って嗜まない事が多いのですが、今作は甘酸っぱい気持ちをあちこちから色んなシチュエーションで摂取出来て楽しめました。食わず嫌いはダメね。
支流が海に繋がる伊坂幸太郎節全開の最終話はお見事ではあるのですが、時系列があっちゃこっちゃいくのが少しだけ読みづらかったです。お話はすっごく綺麗に繋がっているんだけども、何年前を連発されると頭こんがらがってしまう~。
誰かの頑張りが別の誰かに時を越えて繋がる。ささやかな一手が大きな一手だったりもして。人との繋がりを信じ、大事にしたくなるお話でした。
アイネクライネナハトムジーク
(伊坂幸太郎 )
#伊坂幸太郎

